消費者のテイクアウト需要の高まり
近年、生活スタイルの変化や消費者ニーズの多様化に伴い、1人当たりの『中食』の消費量・利用価格は増加しています。
「中食」とは、「持ち帰ってすぐ食べられる、日持ちのしない食品」のことで、外食と内食の中間の食事を指す言葉として定着しています。2007年以降この中食市場は伸びていますが、2019年10月の消費税増税に伴う軽減税率の導入で、テイクアウトや宅配、惣菜などの需要は更に大きく増えています。 新年会・忘年会、花見などの懇親会では、ケータリングやデリバリー、テイクアウトなどの中食で食事を用意し、会社内や各個人宅で行う会社や人が増えていることも背景として考えられます。
テイクアウトなら8パーセント、店内飲食なら10パーセントという消費税率の違いも魅力の1つになっているのでしょう。
テイクアウト・デリバリーは、外食は控えたいが、プロが作る美味しいものが食べたいという消費者ニーズに合致した存在となっています。
メリット・デメリット
メリット
●座席数や回転数を増やすことなく売上増をねらえる
座席数を増やそうにも物理的に限界があり、回転数を上げようとしてもリラックスできないお店として客離れを招く要因にもなりかねませんが、テイクアウトは座席数や回転数関係なしに売上を増やすことができます。
●人員を増やさず対応できる
テイクアウトの場合、既存の厨房スタッフとホールスタッフだけで対応が可能です。
●お店の宣伝効果がある
それまでお店の行列を敬遠して来店されなかった方が来店をするきっかけになることや、持ち帰った商品を見た周囲の人(会社の同僚や家族など)への宣伝・訴求効果が期待できます。
デメリット
●客単価が安くなりがち
テイクアウトには、基本的には飲食代を安く抑えたいという顧客ニーズが強いため客単価はやすくなりがちです。
●新たなコストの発生
お弁当に使用するためには容器を始め、わりばし、おしぼり、ビニール袋などを買いそろえる必要があるため新たなコストがかかります。
●メニューの設定が難しい
テイクアウトのメニューには、見た目がおいしそうであることや冷めてもおいしく食べられることが求められます。また、スープやタレがこぼれにいなどの条件を満たしたメニュー考える必要があります。
営業手続き
店内の厨房で調理した料理をテイクアウトやデリバリーで販売する場合は、飲食店営業許可の範囲内となるため基本的には新たな手続きは必要ありません。ただし、自家製のハム、アイスクリーム、菓子をテイクアウトで提供するには、さらなる衛生管理のため、別の営業許可が必要になります。
テイクアウト専門店を新規に出店する場合は、新たに保健所から営業許可を得る必要があります。また、細かいルールや条件は、自治体によって変わるケースがあるため、一度管轄の保健所に確認しておくとよいでしょう。
価格設定
販売する価格も重要です。地域によって多少差があるようですが、一般社団法人日本惣菜協会の「2019年度惣菜白書」の消費者動向によると、1000円未満が約40%、1000以上以上2000円未満で約20%を占めています。購入する際の選択基準についても、美味しさの次に価格を重要視する傾向があるようです。高すぎると売り上げに結び付かず赤字になるため、その地域に合わせた価格帯に販売価格を設定する必要があります。以下の点も考慮しながら価格設定を行ってください。
軽減税率
以下のパターンは軽減税率により、消費税8%が適用されます。
店外で食事をするため持ち帰り用に包装し、販売するテイクアウト
店外で食事をする料理を宅配する出前・デリバリー
以下のパターンは軽減税率が適用されず、消費税が10%のままです。
店内で食事を提供する飲食店
買ったものを店内で飲食するイートイン
顧客の指定する場所で調理するケータリング
お酒(ビール・日本酒など、みりんや調理酒も対象)
なお、軽減税率の終了時期は現時点(2020年3月)では未定です。
容器代
容器は、箱の大きさや形状によって価格に差がありますが、一般的に1個20円~100円くらいかかります。持ち帰りのための袋、箸、ウェットティッシュなどを考慮すると、テイクアウト商品1つに対して、30円~130円程は必要です。
2020年7月1日から持ち手のついたプラスチック製の買物袋全てが有料化になります。飲食店のテイクアウト・デリバリーで商品を入れて渡す袋も対象です。 消費者に1円以上で販売することがルールとなりますのでご留意ください。
衛生管理
賞味期限の表示
店内で調理した料理をテイクアウトやデリバリーする際には、消費期限や内容量、原材料名などを表示する必要はありません。一方、製造・加工した食材を単に仕入れて販売する場合や、セントラルキッチンなどで調理された料理を販売する場合などは、表示が義務付けられています。営業許可と同様に、事前に保健所に確認しておくと安心です。
食中毒を防ぐ対策
食中毒対策として、以下のような対策をとっておきましょう。
1.消費期限や保管方法を明確にする
シールとして貼り付りつけない場合は、お渡しする時に声掛けをすることで注意喚起となります。
2.ウエットティッシュを付ける
食中毒の予防だけでなく、サービス面でも喜んでいただけるというメリットもあります。
3.保冷剤を付ける
要冷蔵商品を提供する際は、お客様に持ち運び時間を聞くことを忘れずに。そして、その時間にあわせた保冷剤を付けて傷みにくい状態で提供しましょう。
4.季節に応じてメニューを変える
梅雨から夏にかけては食中毒が起こりやすい季節でもあります。その時期にはテイクアウトを中止したり、提供するものを変えてみるのも方法の一つです。お店のこだわりを大切にしつつ、傷みにくい食材を選ぶのがポイントです。
また、時間がある程度経過しても味が劣化しないもの、車の中や公園などどこでもすぐに食べられるものにするなどの工夫をすることも大切です。
また、時間がある程度経過しても味が劣化しないもの、車の中や公園などどこでもすぐに食べられるものにするなどの工夫をすることも大切です。
オペレーション
部分別調理
部分別調理とは、メニューの一部をあらかじめ調理しておく方法です。メニューのいくつかをあらかじめ作っておき、メインメニューのみオーダーを受けてから調理するなどの方法で、おいしさと効率を両立できます。
事前オーダー制、売り切り制
テイクアウトは予約のみ対応としたり、製造した分のみを販売したりするような形を取ることでオペレーションの手間を軽減できます。
店舗スタッフ用のマニュアル
テイクアウトのお客様が来店した際のオペレーションを構築することも必要です。テイクアウトの注文をどこで受けて、いつ会計をするのか。また、調理の順番はどのように決めるかなど、決めておくことがトラブル回避につながります。
集客方法
Google マイビジネス
店舗詳細ページの「本日店舗受取可」機能が追加
顧客に対して、配送事業者などのアプリを頼ることなく、店舗へ直接、テイクアウトやデリバリーの注文するように促すことができるようになりました。
ユーザーが店舗詳細の商品ページにアクセスするか、店舗受け取りが可能な商品を検索すると、販売者のウェブサイトにアクセスし、購入手続き方法として「本日店舗受取可」を選択して注文を完了できます。
SNSの活用
Facebook
若年層のFacebook離れにより、他のSNSより利用者数は少なめです。信頼性の高さからビジネスシーンでの利用が多く、主なユーザーとなっている40代以上の層を狙った集客に有効でしょう。
Twitter
1投稿140文字と短い文章の投稿なので文章の編集など手間も少なく済みます。話題になると拡散されやすいのが特徴です。
Instagram
「インスタ映え」といワードでお馴染みです。メインユーザーは若年層が中心で、おしゃれで印象的な写真を掲載することが効果的です。
LINE公式アカウント
ビジネス向けのLINEアカウントです。「お友達追加」をしたユーザーに情報発信をできるため、繋がり続けることができます。
デリバリー代行サービス
オンラインを利用したフードデリバリー代行サービスには、UberEats(ウーバーイーツ)、menu(メニュー)、出前館、LINEデリマなどがあります。
代行会社に払う手数料は売上の30〜40%ほどかかりますが、配達用のバイクの用意や、人員確保のコストを考えることなく始めることができます。新規顧客獲得の集約手段としての利用価値もあります。
のぼり・看板
テイクアウト・デリバリーをはじめたことを知ってもらうためには、店頭を通りかかった人たちへの周知も効果的です。
店頭に『テイクアウト』や『弁当』などののぼりや、看板やスタンドボードなど複数のツールを利用してPRしましょう。
チラシ・ポスティング
外出機会が少ない顧客や、店の存在を知らない顧客には有効な手段でしょう。人気メニューを中心に、シズル感やインパクトを出したチラシを作成しましょう。クーポンを付けるもの一つの手です。