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「お客様に選ばれる店にならなければいけない」
コロナ禍の中、飲食店オーナーは口を揃えて語ります。
コロナにより生活スタイルは一変しました。デリバリーや、家飲みは当たり前となり、外食は今まで以上に、友人や大切な人との食事の場として求められるようになりました。その需要に応えるために、飲食店オーナーの本物志向の意識は強まっています。
しかし、「選ばれる店」といっても、ゴールは漠然としており、何から始めればよいのか分かりません。そこで、本紙では、選ばれる店づくりの手段として、「ブランディング」を使った方法をご紹介します。なぜ、今ブランディングが大切なのか、どのようにブランドを作り上げていくのか、複数回にわたり解説していきます。教えて頂くのは、ブランドプロデューサーとして活躍する、VISION BRIDGEの代表、大磯爵歌(おおいそ くらか)さんです。
ブランディングって、そもそも何なの?
本題に入る前に、ブランドがあることでどんなメリットがあるか整理していきましょう。
まず、消費者が商品やサービスを選ぶ時、ブランドがある方が選ばれやすい、というのはイメージが湧くかと思います。同じ素材や性能の鞄でも、ヴィトンが選ぶれるのは、ヴィトンを持つ事で外出がワクワクする、ステイタスや信頼を表現できる等、鞄を使うこと以上の価値を得られると、消費者は感じているからです。つまり、ブランドとは単なるロゴやデザインそのものだけを指すのではなく、その商品やサービスを手にすることで、得られる体感値も含めて「ブランド」といいます。そして、そのブランドを育てていく事が「ブランディング」。大磯さんは、ブランディングを次のように定義します。
「ブランディングとは、自社の想い、考え、価値観、哲学を浸透させ、お客様からの信頼を作る活動である」
つまり、自社が大切にしている考えや想いを知ってもらうことで、お客様からの信頼を獲得し、店なら足を運んでくれ、商品やサービスなら手を伸ばしてもらえるようになるということです。信頼を作る活動こそが、ブランディング。そう考えると、ハイブランドだけに必要なものではない、とご理解いただけるかと思います。
ブランディングの予算なんて無いよ、と言うあなた
「ブランディング」と聞くと、ほとんどの人が、かっこいいホームページを作ったり、おしゃれなロゴを作ることを思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、デザインやロゴはブランドを象徴するものであって、それらを作れば、「はい、ブランドが出来ました」となるわけでありません。繰り返しになりますが、ブランドを育てるためには、お客様から信頼を獲得することが大切です。
ブランディングには4つのステップがある
①想いの言語化
お客様にどんな経験を提供したいのか、従業員は何を大切にしているのか、自社が大切にしている考えや想い、価値観、哲学をお伝えするために、考えられることを書きだす。
②コンセプト作り
書きだしたものの中から、共通するものをグループに分け、そこから核となるキーワード、物語を見つけ出し、表現の方向性を定める。
③可視化
コンセプトをもとに、どのようにお客様に伝えていくのか。ホームページのデザインや、ロゴ、キービジュアルに落とし込んでいく。
④浸透(アウトプット)
自分たちの想いを、どのように世の中に浸透させていくか。お客様への声かけ一つにしても、どのような声掛けが良いかを考え、それらを実践していく。SNSで発信していくことも大切。
以上が、ブランディングの4つのステップです。自社の想いを言語化し、それを表現する。「そんなの既にやっているよ。」と思う方もいるかもしれません。そうなんです。SNSで想いを発信する、産地のこだわりを印刷してメニューブックに貼り付ける等、何気ないあなたの行動もブランディングの一つなのです。つまり、ブランディングとは、予算が潤沢にある企業だけが取り組むものではなく、お客様と接する企業であれば必要なものといえます。ブランディングを体系的に学ぶことで、これまでの何気ないSNS発信や、お客様への接客はさらに磨かれていくことでしょう。それが、ひいては「選ばれる店」に繋がっていくのです。
しかし、ブランドを育てることは容易ではありません。次回は、今回紹介した4つのステップの中でも、最初の壁である「想いの言語化」について、具体的な考え方や方法についてご紹介していきます。
著者プロフィール 大磯爵歌(おおいそ・くらか)さん
VISION BRIDGE 代表。言葉で育む、ブランディング研究所主宰。1980年生まれ。岩手県花巻市出身。横浜市在住。2児の母。法政大学経営学部にてマーケティング、ブランド論を専攻。2003年株式会社ミクプランニング入社。2007年株式会社大広へ転職、ブランドプロデューサーとして勤務。2018年 VISION BRIDGEを設立(パラレルキャリアスタート)。2021年独立。
業界歴18年間のキャリアを通して、アルコール、自動車、化粧品、流通、飲料、官公庁など、さまざまな業種・業界プロジェクトを手掛ける。現在は、小規模事業主の「新たな顧客との出会いを作り出す」「ブランドストーリーをひもとき、紡ぐ」ブランド戦略のトータルプロデューサーとして、コンセプトの構築から、コミュニケーション計画の設計、ビジュアル開発、PR戦略に至るまでを一手に請負い、その一気通貫した仕事は顧客から高い評価を得ている。
飲食業界誌「スマイラー」
毎月15,000部を発行する飲食業界誌です。飲食業界で働く人の笑顔を全国に届けたいという想いから、2009年に創刊しました。飲食店経営の楽しさ、厳しさなど、飲食への想いを丁寧に取材しています。
- 発行:毎月発行
- 発行部数:15,000部