東京メトロ千代田線・日比谷線 ・都営地下鉄三田線「日比谷駅」のA11出口と直結している「パティスリー&カフェ デリーモ 東京ミッドタウン日比谷店」。
「オールデイダイニング」という形態で、一日中焼き菓子、ケーキ、パフェ、お食事が楽しめるというスタイルで人気店へと上り詰めました。
更に現在8つある「デリーモ」の店舗は、全て業態が違うというこだわりの詰まったお店になっています。
ショコラティエでもある、江口さんの作るチョコレートの魅力を存分に生かしたメニューを目当てに行列が出来るほど。
2020年に始めたYouTubeではプロが教える簡単なスイーツづくりを紹介して人気を博し、チャンネル登録者20万人を超えるほどになりました。
そんな「パティスリー&カフェ デリーモ 」さんの開業までの経緯や苦労したことや失敗したことなど、そして成功に至るまでの秘話をお聞きしました。
目次
開業までの経緯
進学せずに製菓専門学校の道へ
東京に生まれ両親が料理人と栄養士という環境で、食への強いこだわりと共に育ちました。
大学への進学に想いが向かなかったので、製菓の専門学校への道を歩み、パティシエを目指します。
専門学校での勉強中には、お菓子屋さんではなく居酒屋や警備など、様々なアルバイトをしていました。
そんな時代を経て、2013年の12月に赤坂に「デリーモ」というブランドで出店。
しかし、老朽化もあって次の移転先を探すことにしました。
その間にも目白店、ヒカリエ店と続々出店をしながら、赤坂の本店をどこに移そうか、と探していた時に、三井不動産さんの再開発で「ミッドタウン日比谷」が出来るという話をもらい、調整できる規模間でもあったことと、加えて墨田区に工場を作ったところだったことから、日比谷に本店を構えることとなりました。
大きく動いた2016年
日比谷店の事業計画的にも、大きく動いたのが2016年でした。
日比谷には、お茶屋はあってもスイーツ屋がなかったので目立ったのかもしれません。
日比谷店は地下なので、雨でもお客様が来てくれて、動線としてもお客様が来やすいという好条件が重なり、期待値を大きく上回りました。
肌感としては、結果としてかなり良かったですね。
人気メニュー:カカオメロン 単品 3,168円(税込)
人気メニュー:桃ブラン 単品 3,168円(税込)
人気メニュー:フィナンシェブロンドキャラメル 10個入 4,212円(税込)
人気メニュー:カカオゼリー 8個入 3,067円(税込)
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苦労したこと、失敗したこと、それらを乗り越えたエピソード
赤坂の移転
出店に伴い、新商品のパフェを、従来の形から今の形に切り替えて販売したり、食事メニューも量を増やしたりしたことが苦労した点ですね。
また、全時間帯楽しめる「オールデイダイニング」という、パティスリーとしての新業態にした日比谷本店。
そこでの新商品開発にはかなり時間がかかりました。
皆さん苦戦するとは思うんですけど、僕は、一般的な飲食店の長時間労働というのが性格上嫌いなので、「ある程度のスタッフを抱える」ということと、「効率を考える」ということ、効率化とクオリティの駆け引き部分で苦労しましたし、そこに一番時間がかかりました。
人を増やすということの苦悩
商品は最初から当たっていたのでよかったんですけど、人の採用も含めて同じテンションにするということが難しかったです。
オープニングで新しく人を入れても、その人が辞めていく。会社の成長スピードと、社員のやりたいことの成長スピードがあっていない時期があってそれは大変でした。
お客さんが来ないというのも大変ですけど、お客様がたくさん来るとスタッフが大変で。
ドミナントで東京大丸に2022年に店出したりとか、関西に店を増やしてみたりとか、豊洲に出してみたりとかいろいろやったんですけど、結果、僕らも本店を中心に考えているので、なかなかお客様が分散しない、というジレンマもありました。
店長に商品を任せる
店舗で売る商品を、店長が決める仕組みにしています。
僕はあくまで社長業とシェフ業をやらなきゃいけなくて。
そうなった時に、例えば僕が「カレーライスを売れ」って言ったって、スタッフが本当は「焼きそば」を売りたかったら、僕が「なんでカレーライスを売らないんだ」って詰めるのは、かわいそうじゃないですか。
売るカードがいっぱいあって、それを店舗の子たちが選べるっていうスタイルなんです。
『万が一失敗しても悔いがない。』
「やりたいことが出来る」という環境作りを日比谷店のチャレンジとしてやって、他の店舗でも実施していますね。
聞く人によっては「江口さんは権限移譲をしてますね」っていう人もいれば、「めちゃめちゃ怖いですね」という人もいます。
その代わりその人に借金を背負わせるとかはないので、最後に悲しむのは僕だけなんですけど(笑)喜びはみんなで共有して、悲しみは私が背負うっていうのが大事だと考えています。
50席の店内はオシャレでゆっくり時間を過ごせる空間です
焼菓子は手土産やギフトとして、一年中高いニーズがあり好評を得ています
開業してみてはじめてわかったこと
一日中忙しくするということ
世の中のお菓子屋さんって、「10時とか11時にオープンしてケーキをショーケースに並べた後、ランチタイムが忙しく、その後に少し間が空いて、夜忙しい」というのが一般的な考え方だと思うんですけど。
僕らがSNSとかを利用して販促を行ってみたら、全時間帯忙しくするっていうのは可能なんだなということがわかったんです。
赤坂なんて土日は(オフィス街のため)どこの店も開いていないんですけど。
うちのお店は土日も開けるようにしたら、お客さんが来てくれたんです。
ということは、アイドルタイムっていうのはないのかなって。
「食べてもらいたいものを時間ごとにメニューに入れる」ということで全時間帯忙しくするということが可能なんだなという学びを得ました。
人によってお昼休みも違うので、ランチタイムも午後5時までにしました。
ランチだからといって、それを特別安くするわけでもないんです。
夜になればそれをディナーと呼ぶだけ。
何の変わりもなくスイーツ屋なのに、「ごはんもしっかり美味しい。それでデザートも出てくる」みたいな形態でやっています。
一時期「〆パフェ」っていう言葉がブームとなり独り歩きしていた頃に、お客さんに「夜はパフェが売れるでしょ」とか言われましたが、弊社では全時間帯パフェが売れていました。
メディアが上手く切り取ってくれて「夜でもパフェが出るお店」とかって紹介してくれる。
「全時間帯一緒なんだけどな」とは思いつつ。
露出につながりやすい店舗になってきているのかもしれませんね。
全店違う業態で
23時までオープンしているというのは僕らにとってもチャレンジで、8店舗全部違う業態で経営しているんです。
日比谷店は本店なので、夜遅くまでケーキがあって焼き菓子もあって食事もパフェもあるっていう形態で、「オールデイダイニング」を目指しましょうという形でやっています。
最近できた麻布台ヒルズ店にはショーケースがありません。ケーキがないんです。焼き菓子とパフェと食事だけの店としてやっているんです。
目白店はショーケースにケーキがあって、カウンターがあります。
全店の収益構造が違っていて、どういうのが良いのかっていうのを探り探りやっているんですよ。
より収益性を洗練されたものへともってきているんですよね。
店長ごとに出すものが違っているので、「あそこの店長がメロンパフェを始めたからうちは違うのをしよう」とか店ごとに特色が違う。
店ごとに切磋琢磨している感じですね。
日比谷店と大丸店の店長が仲良く、「日比谷店がそれやるなら、大丸店はマンゴーでやろうかな」とか、逆に麻布店と日比谷店は、エリアマネージャーが一緒なので、二店舗で競争させようかなとか。
他店に流れるハブになっているのが断トツで日比谷店なんです。
日比谷店で売れたものが他店に行ったり、他店で売れたものを日比谷店で数量を多く出せたりとか。
本店としての機能はめちゃくちゃよく機能してくれていますね。
それはオープンの段階から考えていたわけではなくて、「トライアンドエラー」でスピード感をもってやってきた結果なんです。
シェフと社長業の兼任
シェフと社長業を両方やっているから、見えてくるものがあるんです。
シェフの自分としては「ここをなんとかしたい」と思っても、社長の自分が「そこはやめておいた方がいい」と言ってくれる。
常に自分との兼ね合いですね。
8~10店舗くらいであれば苦手な部分はやってもらって、クリエイティブな部分と数値管理は自分でやりきる。
スピード優先の企業であればそれがいいと思います。
昔はシェフとマネージャーが分かれていたけれど、今はSNSの発達で情報伝達が早いので、自分でSNSマーケティングもしています。販促担当兼シェフ兼社長、という感じですかね。
これから開業を目指す方はそういうのが大事になってくると思います。
以前は経営する人間とクリエイティブする人間とで分かれていたので、三ツ星とかいくとシェフとマネジャーが分かれていましたね。
しかしそれではスピードが追い付いていかないと思うんです。
ショコラティエでもある江口さん。絶品のチョコが生み出されます
テンパリングはチョコレートの命でもあります。
絶品のチョコを使い焼き菓子をコーティング
テンポスとのかかわり
備品関係を売ったり買ったりしているようです。
ネットで担当者がやってくれているので。
テンポスさんは中古が多くて、冷蔵庫とか製氷機とかストッカーは新規で買い回りしつつ中古も見させてもらっています。
メンテナンスとかもしっかりされているので中古でも全然大丈夫ですね!
今後の展望・開業する方へのメッセージ
海外での出店
丁度海外をやりたくて、直近ではニューヨークのブルックリンに出店しようと思っていることと、アジアで台湾、シンガポール、タイ、韓国にチャレンジしたいなという気持ちもありつつという感じですかね。
ヨーロッパのロンドンのシェフもやっているので、日本だけではなく、今円も厳しいですし新しいチャレンジとして海外に出たいなという部分があります。
開業はスピード感をもって
開業する時は、「全部新品で揃えて、やりたいことをやって」とかではなくて。まずはスピード重視で、やりたいことを即やれるというのが大事です。
今って、世の中の回転が本当に速いので、すぐ切り替えられるように、極端に言ったら、例えばお菓子屋さんで言ったら大きい平窯入れるとかではなくて、まずはコンベクションオーブンで開店してみて、製氷機とか食洗器とか最低限の小さいものだけ入れて、売れたらまた買い替えるとか。
それを新品でやっていたら駄目なので、テンポスさんとかいろいろあるので、そういうところにこだわらないこと。見える部分とかはこだわってもいいとは思いますが、バックの部分は冷えればいいわけだし(笑)新品にこだわらずやってもいいと思います。
新品だとかそういうことにこだわるよりも、圧倒的にスピード優先でコストも抑えて「まず自分がやってみたいと思ったもの」を1年温めるとかじゃなく即やる。
そのなかでトライアンドエラーをして、少しでも考えている時間があるならキャッシュを生んで更に次のステップを事前に決めてやっていくということが、僕自身の考え方もそうですし、今の時代の流れにはあっているのかなと思います。
考えて悩んでいる時間が長いとマーケティングに合わなくなってきてしまう。
パフェも今は人気で2、3年で開業したお店もどんどんつぶれていますし、カフェもどんどん廃業していきますし。
パンケーキ屋とかタピオカ屋なんてどこいったんだ?ってなっちゃってますよね(苦笑)
だから今やりたいことを「スモールでバッとやってチャレンジしてみる」ということが成功する方法かなと思います。
とにかくスピードが大事だと思います。
僕もヒカリエとかインドネシアとか店を閉めているんですが、それで止まっちゃうと失敗になっちゃうと思うんですよね。
立ち止まらないで、なんとかやっていて10年、今11年目に入るのですけど、こうやって取材とかして頂いて、うまくやってる風にはなるんじゃないでしょうか(笑)
上手くいかなかった店舗はすばやく閉める、というのはとても大事。
素直にそこは情報共有して、そこで止まっちゃったらただの閉店した人になっちゃうので。
じゃあ次に別の店舗を出そうかって時に、「新品で100万の冷蔵庫買うか中古で20万で買うか」って言ったら中古で5台買えちゃうんですよね。
中古で買って5日で壊れましたってなったら困りますけど、1年持つならいいじゃないですか。
保証もついているわけだし、とりあえずそこから始めるっていうのが大事だと思います。
でも、こういった情報が入ってこない場合もあると思うので、今回の記事とかで皆さんが積極的に情報収集していけばいいんじゃないかなと思います。
入り口は高級感あふれる店構えです。
まとめ
ご両親が料理に携わるお仕事をなさっている環境で育った江口さんは、高校卒業後に製菓の専門学校への道を歩み、チョコレート専門店やベルギーでの研修を経て日本初上陸店のシェフに就任。
その後様々な店舗、他業種での商品開発などでの経験を積み、2013年にデリーモブランドの立ち上げと共にシェフパティシエ、ショコラティエに就任されました。
日比谷本店で目指したのは「オールデイダイニング」という一日中いつでも焼き菓子、ケーキ、パフェにお食事が楽しめるというスタイルのお店。
そして他の7つの店舗は「それぞれ別の業態で、店舗ごとに別々の楽しみ方が出来る」というスタイルだというお話を聞き、江口さんのチャレンジ精神を伺い知ることが出来ました。
また、「スピード感が大事」と仰る江口さんのお話は「とにかく考え込むよりはじめてみること」の大事さを教えてくれました。
流行というのはあっという間に生まれては消えてを繰り返しています。
時代の流れの速さに遅れずついていくためには「考えるよりまず行動」ということと「トライアンドエラー」をやりながら繰り返して道筋を見つけることが必要なのだと教えて頂きました。
そのためには規模が小さくてもいいのでやってみること。
コストをかけすぎず開業を目指すこと。
という江口さんのお話は、これから開業を目指すみなさんに深く刺さるものがあったのではないでしょうか。
テンポスドットコムでは、様々な視点からカフェの開業成功を全力で応援します。
自分のお店の業態に合わせて必要なものは何があるのか、詳細を確認することができますので是非ご覧ください!
#取材協力
店名:パティスリー&カフェ デリーモ 東京ミッドタウン日比谷店
店主:江口和明 様
住所:東京都千代田区有楽町1-1-3 B1F
TEL:03-6206-1196