山形県のJR酒田駅より車で約15分。お家のような外観が、温かく迎えてくれる『つけ麺道 癒庵』は、2011年5月13日にオープンして以来、店舗のみならず都内のイベントでもひっぱりだこで、食べログでは★3.45、ラーメンデータベースでは82.895ポイントを獲得するなど(2024年3月5日現在)、人気ラーメン店となりました。
お父様のある言葉から「つけ麺」を極めた店主の三浦さんから、『つけ麺道 癒庵』の開業までの経緯や苦労したことや失敗したこと、そして成功に至るまでの秘話をお聞きしました。
目次
開業までの経緯
店長を支えるために覚えた料理
東京に出たのが、18歳の時でした。
その頃、金銭的に厳しく、なかなか温かいご飯が食べられないという状況から「飲食業界に行こうかな」と考え、19歳の頃、最初は中華料理の出前から始めました。
それからだんだん料理をしていくなか、店長が一人で頑張っていたので、店長にも休んでもらえるように、自分が支えられるよう料理を覚えました。
21歳の頃「週の半分自分がやりますよ。」ということで。
そうこうしているうちに、ある日、タクシー運転手が何か言いたそうにしていて、帰り際「あんちゃんのチャーハン関東一美味いよ」と言ってくれたんです。
その頃はまだ、努力もしていなくて、中途半端な気持ちで料理をしていたのに、そんなに褒めてもらって「申し訳ないな」という気持ちになったんです。と三浦さんは語ります。
そこから「ちゃんとやろう」と決意して。しかし、そこから美味しいチャーハンが作れなくなってしまったんですよ。
3年ぐらい作れなくなってしまいました。
真剣だからこそ料理が「難しく」なった
のめり込めばのめり込むほど、真剣になっていったからこそ、厨房での怪我も増えたり、「見えない壁」も増えていったりしたんです。そこから何とか、自分の料理理論とかを学んで、そんな頃、運よく各店舗の店長から料理を教わる機会があったんです。全店舗の店長から教わった最後の若手っていう感じですかね。
そして、26歳の時、大塚店の店長になって、28歳で本部店長(料理部門の総括)になりました。グループとしては米沢ラーメンのラーメン店、つけめんの店舗とあったので、中華料理だけでなく、ラーメンもつけ麺も見なきゃならなくなって、料理をいろんな角度から勉強しました。
29歳の頃には、自分の父親くらいの人に色々と教える立場になっていました。
そこで、仕事は楽だったのだけれども、なんとなくつまらなくなってしまったんです。
ならばと、その立場を捨て辞めました。
開業の決意
そして、自分の店を持とうと思ったんです。
元々は関東でやっていて、前の職場での「銀座のつけ麺や」は自分が立ち上げ関わっていたので楽しかったですね。
それで、本当は関東でお店だそうと思っていたんですが、姉が二人いて、自分は末っ子で長男という立場だったんですが、親父が(三浦さんが30歳の頃)がんになってしまったんです。
余命1ヶ月と言われていました。
そこで親父が昔、両親が呑んでいるところで、ぽつりと「母親を一人にしないでくれよ」と言っていたのを思い出したんです。「親父との約束だからな」と思って地元へ戻る決意をしました。
そんなわけで、1年くらいかけて地元で開業しました。
一番人気メニュー:醤油つけ麺 950円(税込)
辛味噌つけ麺 970円(税込み)
完熟トマトとモッツァレラチーズつけ麺 970円(税込)
辛味噌らーめん 950円(税込)
開業されている店舗様におすすめ!ラーメン店に必要な「厨房機器や調理道具用品」全てがそろう業種別専門ページをご紹介します。一括見積サービスもぜひご利用ください!
※開業に関して少しでも興味がある方におすすめ!「メインコンセプト・だれに・どこで・いくらで・いつ・何を・なぜ・だれが・どのように」の9つの項目を簡単に整理できる「開業コンセプトシート」と「記入例」を「無料」でダウンロードできます。
ダウンロードするには
(※上記ボタンをクリックし、ぜひダウンロードして活用してく ださい。)
※独立・開業に至るまでの経緯やとっておきの裏話、成功の秘話などを独占インタビュー!上記ボタンをクリックし、多店舗店主のヒストリーもぜひご覧ください。
苦労したこと、失敗したこと、それらを乗り越えたエピソード
自分の苦手なことを職業に選べ
苦労というか、味を作るうえでゼロからスタートしようと思って。
今まで開発担当をしたこともあり、つちかったレシピを持ってはいたのですが、それは使わないと決めて。
親父に昔から「自分の苦手なことを職業に選べ」とよく言われていたんです。
自分の苦手なことと言ったら、銀座のつけ麺屋の時は、オペレーションやチャーシューを作るのとかはやっていたんですけれど、スープは会社の指定のものを使っていたんです。イチから味を作る、つけ麺を作るっていうのは行程もわからず「つけ麺を作る」というのが苦手だったんです。
そんなところから「つけ麺」の店を開きました。
味づくりに関しては、不得意とする場面だったので、大変ではあったものの苦労とは感じませんでしたね。
美味しさとは愛情だ
東京で商売することと、田舎で商売することとの違いが分かるようになるまでが大変でした。
水の味の違いなんかもあって、味噌味が全く合わなくて。何回も何回も作り直しをしました。
1年くらいかかってようやく納得する味にたどり着きましたね。
美味しさはもちろん追い求めますが、「自分が思う料理の理想」は中華料理時代に店長が作っていた優しい味。そこが理想なんです。と三浦さんは力強く語る。
19~20歳の頃に働いていて、同年代と揉めることも多かったんですが、毎朝、店長が作ってくれた野菜炒めを食べると、みんなを優しい気持ちにさせてくれるんです。
それを食べればみんな笑顔になる。
「それはなんでかな?」と考えたんですけど、それはやっぱり愛情が伝わる、寒ければピリ辛なマーボーナスを作ってくれたり。
店長の思いが伝わる、「染みる味」が理想だなと思います。そこを目指して作っています。と三浦さんはしみじみと語ってくれました。
カウンター5、 テーブル10、座敷12の店内はアットホームな雰囲気
座敷もあるのでファミリーでゆっくりできます。
開業してみてはじめてわかったこと
地域性の違い
地域的に座敷は必須でしたね。家族で来られるので。
関東と違って家族で行こうという方が多い。
そこが地域性の違いでしょうか。
いちばん痛烈に思ったのが「美味しければ必ず来る」っていうわけではないということでした。
34歳くらいでの開業で、「うまくまじめに作っていればお客様は来てくれるだろう」と思っていましたが、そんなことはない、と思い知らされました。
半年間給料もでないくらいで。
その頃は本当に大変でした。
地域と関わっていかないと田舎ではとても無理だなと思います。
また、自分を知ってもらわないことには無理ですね。
「知っている人を応援しようと来てくれる」という形があるように思います。
青年会議所やいろんな団体に所属して、お店に来てもらって、初めて美味しいものを提供してまた来てくれる、という形です。
最初は田舎の人たちだけだったので、お酒をのんでくれていましたが、今は行列が出来たりすることがあるので長居する人はいなくなりましたね。
店主の三浦さんとスタッフさんが、温かい笑顔で迎えてくれます
テンポスとの関わり
山形にテンポスの店舗はないですが、2時間かけて仙台の店舗へ行って、ミートスライサーなどを買っています。
また、修業時代に行っていたのが新宿店や池袋店でしたね。
厨房機器や器など開業時に必要な物のほとんどをテンポスで揃えました。
ひとつの店舗ですべてそろうというのがいいですね。
実際に手にとって見られるというのがテンポスさんの魅力ですね。
今は、酒田の麺エキスポの際に、5個ほどゆで麺機を買って、終わると引き取っていただいて、というのをやっています。
今後の展望・開業する方へのメッセージ
「誰に作りたいのか」を見つけて
展望としては、「いろんな味を追求していく」。自分の目指す味に近づけるよう日々研究していこうと思っています。
開業する方へは、まず「自分の味を信用してもらいたい」ですね。
よく若手のラーメン屋さんとも話をするんですけど、美味しさって人それぞれですよね。
何故かというと、小さいころ友達の家で食べたカレーって「ん?」と思うことってないですか。
美味しいはずなのに「ん?」となるのは何故か。それは自分に向けた料理ではなくて、友達に向けて作られた料理だからで、そこに「愛情」の差が生まれるんだと思うんです。
「自分は誰に対して作れば本当の愛情になるのか。」ということにたどり着くのが大事だと思うんです。
一番大切な人に食べてもらいたい、と思えるラーメンが一番美味くなる。
自分は家族に、亡くなった親父に食べてもらいたい、というのが目標です。
誰に向けてラーメンを作るのか、ということを大事にしてやっていくのがいいと思います。と三浦さんは真っすぐ方ってくれました。
料理は愛情で決まる!と語る三浦さんからは料理へ向き合う真摯さを感じました。
お家のような外観。家に帰るような、そんなアットホームさを感じます。
まとめ
納得いくまで追求したつけ麺の数々。
「自分で開業するなら苦手なことを職業にしろ」というお父様の言葉を胸に、つけ麺で勝負した三浦さん。開業の際には、地域ならではの特徴で苦しめられたようですが、これから開業を目指す皆さんは、「どのような場所でどのような規模のどのようなお店を出すか」ということを事前にしっかりとリサーチして開業出来るとよいですね。
そして、三浦さんが語ってくれた『「誰に向けて作りたいのか」を明確にする』という言葉は今から開業を目指す皆さんにとってはとてもよい教訓となりそうですね。
家族へ、お父様へ向けたラーメン作りを日々探求している三浦さんを、お父様は頼もしく思っているのではないでしょうか。
たくさんのお客さんに喜んでもらいたい、というのはもちろんですが、「誰に」美味しいと言ってもらいたいのかを明確にすることによって「自分が目指す味」というものがはっきり見えてくると思います。
これから開業を目指す皆さんは、この記事で学んだ、「立地をよく理解する」ということや「誰へ向けて作りたいか」という明確な味の方向性を考える、ということを念頭に置いて開業までの準備をすすめていきましょう!
テンポスドットコムでは、さまざまな視点からラーメン店の開業成功を全力で応援します。
自分のお店の業態に合わせて必要なものは何があるのか、詳細を確認することができますので是非ご覧ください!
#取材協力
店名:つけ麺道 癒庵 (ゆあん)
店主:三浦 純一氏
住所:山形県酒田市こあら2丁目17-12
TEL:0234-28-8659(予約不可)