冬になると無性に食べたくなる焼き芋。
スイーツのような甘さと香り、飽きのこない素朴で優しい味わいと、アツアツのお芋を頬張った時の幸福感で人々を虜にしてしまいます。昔は家庭で食べるおやつの感覚が強かった焼き芋ですが、今やその人気は拡大の一方で、数多くの焼き芋専門店が出店するまでになりました。
人気の秘訣、また焼き芋屋を開業する際のポイントについてまとめました。
目次
焼き芋ブームの歴史
焼き芋ブームは現在第4次ブームに突入していると言われています。
これまでのブームにはどのような歴史があったのでしょうか。
第1次ブーム:文化・文政期(1804年)~明治維新(1868年)
江戸時代後期は砂糖が貴重品で、甘くて安い焼きいもは老若男女、貧富を問わず大人気を博しました。その繁盛ぶりは、歌川国貞(三世豊国)の浮世絵からもうかがえます。
第2次ブーム:明治時代~関東大震災(1923年)
明治維新以降、東京の人口急増と安い値段によって、焼きいもの需要が増大しました。そしてそれに応えるためにこの時代に焼きいも専門店が現れたとされています。この時代の焼きいも屋は冬期間のみの商いで、夏場はかき氷屋なども兼ねていました。現代の運営戦略とも似ていますね。
第3次ブーム:1951年~大阪万博(1970年)
焼きいもの消費は、関東大震災を境に洋菓子の普及もあって一時減退していきました。1951年に、三野輪万蔵(みのわまんぞう)によって考案された石焼きいもの「引き売り屋台」が東京に登場すると、そこから再び石焼きいもの大ブームが、高度経済成長期とほぼ軌を一にして起きました。
しかし、1970年の大阪万博を境に、石焼きいもはファストフードの進出もあって衰退の道をたどりました。
第4次ブーム:2003年~現在
2003年から始まった「平成の焼き芋ブーム」。
穏やかながらずっと継続され、特にここ数年からはブームが加速している印象です。
焼き芋の種類
焼き芋といえば、「ホクホク」の食感が魅力の一つ。しかし、ここ最近の焼き芋のブームではホクホクだけではなく、しっとりやねっとりなど新たな焼き芋の魅力が登場しています。
芋の品種によってまったく違う仕上がりになる焼き芋。芋の品種ごとに特徴を紹介します。
王道の「ホクホク」品種
・紅あずま
天ぷらなどにもおすすめの品種で、色鮮やかで甘味とコクがあり、栗のようなホクホクの味わい。
・土佐紅金時
ホクホクかつもっちりとした食感が特徴。12月以降は特に甘みがまして美味しく食べられます。
・紀州金時
和歌山の温暖な気候に育てられたなると金時で、食感や味、香りのバランスがよく、焼き芋以外にさまざまな料理に重宝します。
・ベニコマチ
香取市固有の品種で、生産量が少ないため幻のさつまいもとも呼ばれます。ホクホクして上品な甘さが特徴です。
・鳴門金時
とれてからしばらく貯蔵することで、ホクホクに加えてねっとり感もでてきます。甘みも増して、ホクホク系の中でも人気の品種です。
・パープルスイートロード
アントシアニンの成分を多く含みヘルシーな品種。紫芋の中では甘みも強く、素材そのままで美味しいので焼き芋にもぴったりです。
安定の「しっとり」品種
・ふくむらさき
甘みがつよく、オーブンや蒸し器でじっくり加熱するとしっとりスイートポテトのような仕上がりに。大学芋やモンブランにもおすすめの品種です。
・紅まさり
甘みがつよく、なめらかな口当たりが人気の品種。焼き芋の他、干し芋などにして甘みをじっくり引き出すとお砂糖なしでもスイーツ感覚に。
革命の「ねっとり」品種
・安納芋
ねっとり品種の火付け役。鹿児島県南部が原産。水分量が多く粘質性で、加熱するとクリームのようにねっとりとろとろの食感に。
・紅はるか
ねっとり系の中でも特に甘みがつよく、焼き芋をはじめ数多くのスイーツに多用される品種です。じっくり加熱すると中から密が溢れてくるほどジューシーな仕上がりに。
・シルクスイート
名前の通りシルクのような滑らかな舌触りと甘すぎない上品な甘みが特徴。ねっとり系に分類されますが、べたっとしておらずほっくりとねっとりのハイブリッド感が楽しめます。
焼き芋屋開業、成功のためのポイント
ブームに乗ろう!と焼き芋専門店の開業を目指す方が増えています。省スペースで比較的少ない機材で開業ができるためはじめやすい一方で、いくつかの注意すべきポイントがありますのでご参考にしてください。
①品質と味の向上
ブームであるがゆえに、どこの店舗も非常に高いレベルの商品が提供されています。シンプルな商材のため、品質や味は顧客満足度に大きく影響してきます。良質なさつまいもを選び、焼き加減や風味にこだわり、一貫して高品質な焼き芋を提供することが大切です。他との差別化を図り、リピーターを増やす効果があります。
②場所の選定
適切な立地は成功の鍵です。人通りが多く、ターゲット層に合った場所を選ぶことが重要です。学校やオフィスビルの周辺、商店街など、需要が見込まれるエリアを検討しましょう。
③店舗のデザインと雰囲気
店舗の外観や内装は、お客様に良い印象を与えるだけでなく、リラックスした雰囲気を提供することも重要です。清潔感があり、居心地が良い環境を作り出すことで、顧客の滞在時間を延ばし、リピート率を向上させることが期待できます。焼き芋屋さんでは「和×モダン」をテーマにしたデザインの内装が人気のようです。
④効果的な販促活動
開業後の戦略も大事な要素のひとつ。キャンペーンやイベントを通じて新規顧客を獲得し、リピーターを増やすための販促活動が必要です。SNSや地域のコミュニティへの参加、クーポンの提供など、効果的なマーケティング戦略を展開しましょう。
⑤顧客サービスとフィードバックへの対応
顧客サービスは店舗の成功において不可欠です。笑顔での接客や迅速かつ正確なサービスが、顧客の満足感を高めます。また、顧客からのフィードバックには真摯に対応し、改善点を取り入れることで、お客様の期待に応えつつビジネスを発展させることができます。
まとめ
冬の食べ物のイメージが強いですが、近年では冷やし焼き芋、冷凍焼き芋など冷たくして食べる新感覚の商品や、アツアツの焼き芋にアイスを乗せて、アツアツとひんやりを同時に楽しめる商品など、1年中美味しく食べることができます。
焼き芋ブームはこれからもまだまだ続きそうですので、是非自分好みの焼き芋を探求してみたり、思い切って開業に踏み切ってみるのもよいタイミングかもしれませんね。
ぜひ参考にしてみてください。