値上げをしても大丈夫?飲食店における値上げのポイントを解説

経営ノウハウ

コロナ禍で大きく落ち込んでいた飲食店への客足ですが、徐々に回復の兆しを見せています。

しかし、コロナの影響は客足の減少だけにとどまりませんでした。ガスや電気、食品などの値上げが飲食店の経営を圧迫しています。

様々な経費が値上がりした分をメニューの価格に転嫁(値上げ)したら客足が遠のくのではないか?ライバル店に客をとられてしまうのではないか?そういった不安から値上げを躊躇している飲食店は多いのではないでしょうか?

本記事では、値上げをしても大丈夫か、値上げをするならどのような形が良いのか、筆者の考えを述べたいと思います。飲食店の健全な経営の継続のための参考になれば幸いです。

コロナ禍前後の飲食店を取り巻く状況

2020年初頭に始まったコロナ禍により飲食店への客足は大きく減少し、多くのお店が閉店に追い込まれました。

2023年5月に新型コロナは5類感染症に移行、それ以前から客足は徐々に戻りつつありましたが、今度は光熱費や原材料費(肉、卵、魚介など)の値上げが増加、例えば原材料費は農林水産省の調べで平年比10%~30%程度の値上げとなっていて、飲食店の経営に負担として重くのしかかってくるようになりました。

食品の価格動向(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/kouri/

食品価格改定動向調査(帝国データバンク)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p221211.pdf

値上げ判断とその方法を考える

データを見るまでもなく、連日ニュースで値上げが取り上げられています。世間的に値上げやむなしの風潮は既に出来上がっていると考えて間違いないでしょう。

では、飲食店としてはいつ、どの程度、どのように値上げすれば良いでしょうか?

いつ?

今が好機と考えられます。

下の記事では食品業界が全体的に前年と比べて値上がり傾向にあり、しばらくは値下がりする可能性が低そうな状況が見て取れます。一方で値上がり傾向のカーブは緩やかになっていて、価格は安定してきているようです。

国内で販売されている主要商品の価格推移(東洋経済):
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/dashboard/consumer-price/

何かが値上げするたびに都度メニュー価格に転嫁するより、頑張って辛抱してきたけどもう無理なんで値上げさせてください!と言って値上げに踏み切る方が、感情的に応援したくなったり共感を得やすいものです。

世間的に値上げもやむを得ないという風潮が出来上がっていて、いくら値上げすれば長期間利益を維持できそうか読みやすい今こそ値上げの好機と言えます。

どの程度?

客層や使用する原材料などにもよると思いますが、飲食店では1割から2割程度の値上げが多いように思います。

値上げやむなしの風潮と同様、卵のような大きく値上がっていることが知れ渡っている材料を多く使うメニューでは値上げ幅が大きくてもやむを得ないと共感を得やすいでしょう。

ただ、あまり値段が高くなると割高感が勝り注文しにくくなるかもしれません。2割程度の値上げでは利益が出ないメニューについては、他のメニューの利益で補填するか、後述するリニューアルで対応するのも手です。

他のメニューで補填する場合に注意したいのは売れ筋かどうかです。売れ筋メニューの値上げを抑えて他のメニューで補填する場合、売れ行き次第で補填が追い付かなくなる可能性が出てくるからです。

どのように?

注意したほうが良いのが、客にサイレント値上げととられないことです。

人はもともと損得に敏感で、だまされたと意識したときに不快感を強く感じてしまいます。SNSなどで炎上しやすいケースがサイレント値上げです。

具体的には、どのような場合にサイレント値上げととられるでしょうか?

メジャーな例が同じ商品、同じ価格なのにこっそり内容量だけが減っている場合です。お菓子メーカーのパッケージ商品やコンビニPB商品などで炎上していました。

他には原材料を安い別のものに変える場合です。商品名に産地が含まれているのにそのままの商品名で販売して、産地偽装の事件になってしまった例もありました。

客商売である以上、誠実さは非常に重要です。ネット社会では炎上した記憶は事あるごとに蒸し返され、なかなか消えません。一度失った信頼を取り戻すことが難しくなってきているのです。

サイレント値上げをするぐらいなら堂々と値上げを宣言してしまいましょう。むしろ誠実さを評価する客のほうが多いと思いますよ。その際、値上げの理由や内訳(卵や油の価格がどれだけ上がったかなど)も併記すると説得力があがり効果的です。

実は、サイレント値上げなのに成功するケースもあります。別商品としてリニューアルしてしまう方法です。リニューアルなので、内容量が減っていたり味が変わっていたとしてもだまされたと感じにくいのです。

値上げ幅の大きいメニューでは、リニューアルすることも検討しましょう。その際、名前や見た目がそのままだと値上げと思われるので、多少アレンジしたほうが良いでしょう。

【人気の記事】飲食店の集客・売上を落とさず、メニューの値上げをするには?~食材高騰を乗り越える!~
※ぐるなびの飲食店向けサイト「ぐるなび通信」へジャンプします。

まとめ

飲食店が値上げを我慢する必要がないことはお判り頂けたかと思います。むしろ健全な経営のために必要で、世間的にも許容される風潮が出来上がっています。

しかし、利益をあげるために値上げにばかり頼って値上げを何度も繰り返すようなことは避けるべきです。客は1回2回ならやむなしと思ってくれても、繰り返すうちにストレスが蓄積されてしまいます。

値上げと並行して業務の効率化や経費削減なども検討したり、値上げ幅に余裕を持たせたりして必要最低限の回数の値上げで済むように工夫していきましょう。

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