事業計画書とは、どのように事業を経営していくのかを具体的に書面にしたものです。金融機関からの事業資金を調達するための鍵となる重要な書類となります。
ここでは、飲食店開業における事業計画についてご紹介いたします。
目次
飲食店開業における事業計画とは?
コンセプトが決まったら、作成したコンセプトに具体的な数字を落としこんでいき、事業計画書を作成していきます。売上目標や今後の流れなど、具体的にまとめ第三者にも伝わる事業計画を作成しましょう。
開業計画
飲食店の開業には「売上計画」や「収支計画」を含む、具体的な「開業計画」が必要となります。
売上計画
店舗の立地や業態、規模などの特性を踏まえて、売上の見通しを立てます。計画通りに売上があがらないと開業後に経営困難になってしまう可能性が高くなります。そのため平日、土日祝で来客予想数を変えるなど、細かく作成していきましょう。
■売上
売上 = 1日の来客数 × 客単価 = 席数 × 客席稼働率 × 回転数 × 客単価
売り上げを上げるには下記3つの方法があります。
・客数(集客)を上げる
・客単価を上げる
・回転率・稼働率を上げる
シミュレーション
下記のポイントに注意して、実際にシミュレーションを行ってみます。
・売上につながる部分(客単価など)を過剰評価していないか
・計画にズレが生じた場合の資金調達手段などの対策はしているか
・毎月の運転資金が、計画より上回る可能性はないか
立地条件によっては、平日や土日祝、時間帯によって客層が異なるため、その差も考えることが必要です。
そのため売り上げを考える際には、週単位で考える必要があります。
収支計画
収支計画は、「収入」と「支出」、「借入」と「返済」などの関係を長期わたって予測することです。
収支計画書とは「収入」と「支出」を表にして、どのくらい利益が出るのか表したものを指します。
飲食店にかかる主な費用
■人件費・・・・・・売上の30%以内
■家賃・・・・・・売上の10%以内
■原料費・・・・・・・売上の30%以内
■水道光熱費・・・・・売上の5%以内
■その他の経費・・・・売上の10~15%以内
人件費・家賃・水道光熱費は、コントロール次第では金額も大きく変動するため、利益が左右されることもあるので注意が必要です。
損益分岐点
損益分岐点とは、売上高と費用の額が等しくなるラインのことを言います。損益分岐点を計算する事で、「使った費用に対していくら売れば回収できるか」がわかります。
損益分岐点=固定費÷(1-変動費÷売上高)
変動費:売上に比例して増減する費用のこと。(原材料費・仕入原価・販売手数料など)
固定費:売上の増減にかかわらず発生する一定額の費用のこと。(人件費・家賃・水光熱費・リース料など)
FLコスト(FL比率)
FLコストとは、「食材原価(Food)と人件費(Labor)の合計金額です。
FL比率とは、飲食店の売上高に占める、FLコストの比率のことを言い、飲食店を経営する上で重視すべきポイントとなります。
FLコストとFL比率の計算式については下記のように求められます。
■FLコスト=食材費+人件費
■FL比率=(食材費+人件費)÷売上
市場調査
開業したい店舗エリアの目星がついたら、次はそのエリアの競合店の立地調査を行います。
開業予定の店舗と似たようなコンセプトとなる競合店については重点的に調査分析します。出店予定の店舗の周りにどんな競合店があるのか、周囲にどのくらいの人がいるかなど、環境的な事情を調べておくことはとても重要です。周囲の他店状況次第では、どれだけ良いお店を開業したとしても利益が見込めないケースもあります。
商圏分析
商圏とは自身のお店を出店する際に、来店を見込める顧客が集客できる地域のエリア範囲です。
商圏範囲はその店の業態、店舗の距離、競合店の存在、出店エリアの人口、顧客の移動手段など環境によって変わってきます。店舗付近に駅がある場合は、時間帯ごとに駅の乗降客数や年齢別人口を調べるのもいいでしょう。実際に足を運んで店舗前まで通行量調査を行い、年代や性別など時間帯によって人数を調べるのも有効です。店舗前での通行量調査は土日祝、天候、朝・昼・晩と様々な条件で行うこともおすすめします。
この調査ではターゲット層、顧客の行動も把握することができるため、商圏範囲を設定する際に大切なポイントとなります。
店舗の場所、建物
店舗は場所や物件によって、集客数や毎月かかるコストが異なります。事業計画・コンセプトをもとに、物件探しの諸条件をしっかり固めることが重要です。家賃を支払えないことが原因で閉店する店舗もあるため、店舗の立地は慎重に選びましょう。
内装、外装
内外装を決めるうえで、やはり重要となるのがコンセプトです。コンセプトを意識して、店舗に必要な内装・外装を選びましょう。
厨房設計
厨房設計では必要な設備や広さ、レイアウトを決定していきます。提供するメニューによっては、必要な機器が異なりますので注意しましょう。
店名(屋号)
お店のネーミングで重要なのは、覚えやすいことです。長い店名は人の記憶に残りにくいものです。長い店名だと言葉に出しにくい上、インターネットで検索の際に入力の手間もかかります。魅力が十分に伝わる店名にするために、コンセプトやターゲットを考え、そこに見合った店名を付けるようにしましょう。
資金計画
資金計画は、開業するときに必要な資金に対して計画することです。資金計画には次の4つを盛り込みます。
1. 投資計画を立てる
まずは飲食店を開業するために、何にいくらお金をかけるのかが重要です。主に物件費用、内装工事費用、厨房機器やテーブル、椅子などの備品、販促費、仕入れ、運転資金、人件費など、何にいくらお金がかかるのか数字で示します。
2. 利益計画を立てる
利益計画とは、売上高、費用の目標といった毎月の儲けがいくらかかるかを計画書にまとめたものです。営業を開始する前には、利益計画を立てる必要があります。
3. 資金調達計画
資金調達とは資金調達方法を企画・計画することで、どこから調達するか具体的に計画を立てていきます。
資金調達方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
4. 返済計画
返済計画では借り入れたお金を何年で償却するのか、返済方法や返済期間、返済金額などを明確にしていきます。
店開業にかかる費用
飲食店を開業するためには、物件費用、内装工事費用、厨房機器やテーブルなどの備品、人件費、販促費など様々な費用が必要になります。
各費用の内訳
開業資金は下記のように区分され、開業資金は状況によって異なりますが1000~1500万円程度は必要となってきます。
■家賃
■物件取得費
■内装工事費
■厨房機器・備品代
■初期仕入代
■宣伝広告費
■運転資金
■人件費
■原材料費
■水道光熱費
■借入金返済
コスト削減のポイント
■中古品を利用
ホールから見えない厨房機器・備品を中古品で揃えることで費用を抑えることができます。
■居抜き物件
もしラーメン屋を開業するのであれば、以前ラーメン屋だった物件で、使用された機器・備品などを使用することで大幅にコストカットが見込めます。
■リース
厨房機器をリース契約にすることで、初期費用を抑えることができます。しかし、所有権はリース会社が持っているため、リース契約が終了した後も所有権は移りませんので注意しましょう。
■広告・宣伝費用は外注コストの削減
広告・宣伝にあたっては、広告作成費用や送付、掲載費用等が発生します。
SNSの活用や自ら広告案を出したり、チラシの配布を自ら行うことで、外注コストの削減も可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?以上が事業計画の目的や計画内容などについてのまとめでした。売上計画・収支計画などあらゆる計画を立てていくことで、そこから売上が足りない場合の原因や問題点、対策がしやすくなります。シミュレーションは何度も行って、開業に備えるようにしていきましょう。