飲食店を経営するうえで必要なのは物件や設備だけではありません。経営がうまくいくかどうかは自身のお店の経営状態をいかに把握しているかがカギとなります。そこで今回は、飲食店を経営するうえで必須級の知識である利益率などについて解説をしていきます。
目次
飲食店経営に必要な経営指標とは
経営指標とは企業の経営状態を数値で分かりやすくしたものを指します。経営者は様々な経営指標から自身のお店がどの程度の経営状態であるかを把握したうえで、改善策を考える必要があります。
原価率とは
原価とは商品に対する材料費のことを指します。つまり原価率とは販売価格の内の原価の割合を示します。なお、原価率の相場は業態ごとに異なりますが、一般的な飲食店の原価率の相場は30%程度と言われています。
計算方法
原価率の計算方法は以下の通りです。
原価率(%) = 原価 ÷ 販売価格 × 100
例えば1000円のステーキを販売した際の材料費が400円だった場合は、原価率は以下のように算出されます。
400 ÷ 1000 × 100 = 40(%)
原価率は40%となりました。
利益率とは
利益率とは売上総利益率のことを指します。売上総利益率とは、売上高に対する利益の割合を示す経営指標の事です。
なお、利益率の相場は業態ごとに異なりますが、一般的な飲食店の利益率の相場は10~15%と言われています。カシオ計算機株式会社では独自の統計データから業態ごとの平均利益率を算出しています。
計算方法
利益率は以下の計算方法で算出します。
利益 = 売上高 - 仕入れ原価
利益率(%) = 利益 ÷ 売上 × 100
例えば、900円の仕入れ原価の商品を1200円で販売し、300円の利益が出ている場合は計算は以下のようになります。
300(利益) ÷ 1200(販売価格) × 100(%) = 25(%)
上記の事例の場合の利益率は25%となりました。
FL比率とは
Food(食材費)とLabor(人件費)を合算したものをFLコストといいます。FL比率とは売上高に対するFLコストの比率を指します。FL比率には5段階の指標があります。
FL比率50~55%もしくは50%以下は食材費、人件費を高い水準でコントロールすることができる優良店となります。多くの飲食店はFL比率55%~60%の水準にとどまっています。一方でFL比率60%~65%もしくは65%以上は危険店と言われ、食材費、人件費ともにバランスが悪く、いずれ経営破綻することが考えられます。
計算方法
FL比率の計算方法は以下の通りです。
FL比率(%) = (食材費 + 人件費) ÷ 売上高 × 100
店舗分析をする際に必須の経営指標とは
上記では、基本的な経営指標である、利益率やFL比率を解説しましたが、経営指標にはまだまだ種類があります。以下では知っておくと便利な経営指標を紹介します。
損益分岐点とは
損益分岐点とは売上などの収益と運営費などの支出にかかるコストが等しくなる点を指します。つまり、損失と利益の分岐点となるポイントの事です。損益分岐点を上回れば黒字、下回れば赤字ということになります。
損益分岐点には変動費と固定費が関係します。
変動費とは
変動費とは営業日によって変動する諸経費のことを指します。代表的なものとしては、食材費、水道光熱費などが挙げられます。
固定費とは
固定費とは一定の期間で変動せずに発生するコストのことを指します。代表的なものとしは、家賃や正社員の給料が挙げられます。
計算方法
損益分岐点の計算方法は以下の通りです。
損益分岐点 = 固定費 ÷ (1 - (変動費 ÷ 売上高))
例えば、毎月の売上高が250万円のお店で変動費が80万円、固定費が160万円かかる場合の損益分岐点は以下の通りに算出されます。
160万円 ÷ (1 - (80万円 ÷ 250万円)) ≒ 235万円
上記の例の場合の損益分岐点は約235万円となりました。毎月の売上高が250万円であるため、このお店は黒字と言えます。
客席回転率とは
客席回転率は日ごとに1つの席に何名の顧客が座ったかを示します。
計算方法
客席回転率の計算方法は以下の通りです。
客席回転率 = 1日の来客数 ÷ 総客席数
例えば、総客席数が50席で1日に150人の来店があれば3回転となります。
人時売上高とは
人時売上高とは1時間あたりに従業員1人につきどれだけの売上高を出しているかを示す指標です。一般的な飲食店における人時売上高の目安は4000円~6000円程度と言われています。
計算方法
計算方法は以下の通りです。
人時売上高 = 売上高 ÷ 総労働時間
例えば、1日当たりの売上が8万円あり、従業員5名で8時間ずつ働いたとします。この場合の総労働時間は40時間となります。よって人時売上高は次のように算出されます。
80000万円 ÷ 40h = 2000円/h
この際の従業員の給料が時給1000円だとすれば人時売上高の半分を占めることになり、残りの部分から諸経費を捻出することになります。このような場合は、アルバイトのシフトの見直しや売上高の改善などが必要になります。
利益を上げるためにできることとは
利益を上げるためには、上記の経営指標から見直すべき点を明らかにして、改善策を検討する必要があります。利益を上げるためにできる改善策を解説します。
メニューの見直し
原価を見直すことで利益率を上げることができます。原価率は一定の割合に留めなければならないわけではないため、原価率の低い飲料メニューと他の商品を組み合わせることでバランスをとるなど、工夫次第で利益を上げることができます。
経営方法の見直し
人件費を削減する場合に最も手っ取り早いのは、解雇や賃金の引き下げですが、これらは従業員のモチベーションに関わるため、おすすめはできません。
マニュアルなどを見直して従業員一人一人の作業効率を上げるなど人時売上高を意識した対策をとりましょう。
変動費を削減する
食材のロスを無くすことによって、変動費の内の食材費を削減することができます。結果的に仕入れの数も減るため、損益分岐点が低下し利益を出しやすくなります。テイクアウトをする場合は消耗品を多く使用するため、原価の変動に損益分岐点が左右されやすくなります。
テンポスドットコムなどの業務用品を取り扱っている店舗から安く仕入れることで、変動費を削減していきましょう。
回転率を上げる
客席回転率の他にも客席稼働率という経営指標があります。稼働率は以下の計算式で求めることができます。
客席稼働率 = 満席時の客数 ÷ 総客席数
満席時の客数が30人で総客席数が40席だとすると稼働率は75%となり、総客席数の25%が無駄になっていることが分かります。稼働率を上げるには、テーブルを2人席単位にして、客数によって自由に席数を変えられるようにしたり、相席を推奨することが挙げられます。
ただし、昨今はコロナウイルスへの感染防止対策が重要視されているため、オーダーや料理の提供時間の短縮といった回転率の向上が必要となります。
まとめ
本記事では様々な経営指標を紹介してきました。実際に計算してみると自身のお店の経営状態がより一層分かりやすくなったのではないでしょうか。
自身のお店の経営状態が分かればどの部分を改善すればよいかも見えてきます。本記事で紹介した方法以外にも改善策はあるため、自分のお店に合った改善策を実施し、健康的な飲食店経営を目指しましょう。