【ラーメン店・中華そば 麺壁九年】「開業=スタートでゴールじゃない。」良い意見は「すぐに取り込め」、悪い意見は「即改善」と語る店主が東京・新宿にある「らぁ麺はやし田」から独立後の成功秘話とは?

出店・開業

西武新宿線井荻駅から徒歩2分の立地にあるラーメン店「中華そば 麺壁九年」。2020年にオープンして以来、すぐに2020年上半期(1月〜6月)の都内新店ランキングでラーメンデータベースの得点10位以内に入る実力店になりました。店主は、東京・新宿にある「らぁ麺はやし田」で5年、その他店舗も含め9年の修行を積んだ石岡文仁(ふみひと)さん。「ブランド鶏と野菜」「数種類の節とアゴ煮干し」それぞれの素材から長時間かけて抽出した2種類のスープを合わせたWスープの中華そばと、季節により産地を厳選した数種類の煮干しを使用したいりこそば。上品な味わいの中に素材の個性をしっかり感じられる二種類の看板メニューが人気となっていますが、ここまで来るには一筋縄ではいかない数多くの苦労があったのです。

開業までの経緯

東京・井草の出身で、ラーメンの人気エリアなので幼少期から父親に、中華そばの名店「春木屋」「丸福」「丸信」に連れて行ってもらっていました。また、地元に「御天(ごてん)」というとんこつラーメンの名店があり、好きで10代の頃から通っていました。そういったラーメンに対する親近感や、飲食店でのアルバイト経験が多く、料理にも興味があったことから、28歳で「自分のラーメン屋を持ちたい」という気持ちが生まれました。そのため、30歳前にはラーメン業界に入り、35歳までには独立したいという人生プランを考え、28歳でラーメン業界に入りました。新宿の「麺匠 竹虎」で約3年、別のラーメン店で数年、そして「らぁ麺はやし田」で5年修行をしました。

株式会社INGSが展開するラーメンブランド「煮干中華そば 鈴蘭」に社員として入社し、その後店長を務め、新ブランド「らぁ麺はやし田」を立ち上げる際の店長を任され、立ち上げから拡大、さらに数店の別店舗立ち上げを経験し、最終的にはマネージャーをやらせていただきました。

開業のきっかけは、「らぁ麺はやし田」の新店舗立ち上げ経験を生かして、「自分の力で出来るな。」と見極めたから。味づくり・店舗の運営に関して勉強させてもらったので、このタイミングで決めた感じです。

そして、2020年3月10日にラーメン業界に入って9年目の37歳で、西武新宿線井荻駅から徒歩2分の場所に「中華そば 麺壁九年」をオープン。新店ながら「知る人ぞ知る」人気店になったのです。

「中華そば 麺壁九年」一番人気の看板メニュー「特製中華そば」 1,300円(税込)※トッピングは、レアチャーシュー、味玉、ネギ、三つ葉、ワンタン、穂先メンマ。

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苦労したこと、失敗したこと、それらを乗り越えたエピソード

2020年3月10日にオープンしましたが、翌月の4月にコロナの緊急事態宣言が発令。物件を契約したのが、2020年1月で、その頃はまだコロナに関しては、出始めでそれほど騒がれていなかったので、何の心配もせず「地元でいい物件が見つかった。」と喜び、開店まで楽しみや不安と毎日葛藤しながら準備をしていました。

しかし、日が経つごとにどんどんコロナに関して状況が悪化し、良くない方向に向かっているなと実感しているなかでいざオープン。オープン直後は、同業のラーメン屋の店主の方や、出店した地元の友人たちが来店しサポートしてくれたのでおかげさまで順調でしたが、一般のお客様は、通常だったら電車に乗って来店することが多いので、緊急事態宣言が発令された頃は、そういった方々の来店が減り影響を受けました。その後は、コロナ禍のなかで、外出される方とされない方の二極化がはっきりしアップダウンがありましたが、しっかり対策をされて来店いただいたお客様には感謝しかないですね。

また、2020年4月の緊急事態宣言発令後の2~3ヶ月後には「テイクアウト」を開始。これで売上をカバーできたところが大きく助かりました。早い段階で動き始めたのが結果的には良かったと思います。

失敗したことは、2020年12月。厨房内の漏水が発生し、地下にも水漏れするほど。お店を3週間ほど休むことになり、階下のテナント店舗への補償やスタッフへの給与面の補償が必要で、その期間は収入がなくなっても支出が多かったです。実際に「居抜き」で契約し、築年数も45年ほどだったのでリスクはあったかもしれませんが、契約時は勉強不足もあり、水回りの状況確認まで気が回っていなかったですね。「居抜き」の物件は実際に入ってみないと分からない事の方が多いので、この点は意識しておいた方がいいかと思いますよ。こんな失敗はありましたが、テナントの大家さんがとても良い方で、様々な面を考慮いただき本当に助かりました。

このコロナ禍のなかで、乗り越えられたのは、スタッフが辞めずに残ってくれたことで、本当にありがたかったですね。アルバイトスタッフさんも含め1人も辞めなかった。無事に漏水の工事も終えて営業再開時には、みんなが揃っていたのですぐに再スタートできました。スタッフがいてくれるから自分もお店を運営出来ています。自分でいうのもあれですが、スタッフへの感謝の気持ちはだれにも負けない自信がありますよ(笑)。

こんな状況だと、人件費を削る飲食店が大半かと思いますが、そうするとスタッフが離れてしまう。コロナ禍が過ぎ通常営業を開始する際に、人手不足で体制が整わないことも多いと聞きます。しかし、この部分に関しては人件費を削らず、うまくシフトを組んで営業をしていましたので、通常営業に戻った際も影響がなかったので、スタッフには感謝しかないですね。この場を借りて声を大にして言っておきたいです。

カウンター7席・テーブル2名席2卓のため、行列が絶えない日が続いています。

開業してみてはじめてわかったこと

開業した場所の最寄り駅が西武新宿線井荻駅なのですが、なかなか人が少ないエリアなんです。都心からも少し離れているので、こういった状況でどう集客をしていくべきかは大きな悩みで、「味づくり・見せ方・広告」に関しての悩みは尽きないです。

こういった環境なので、出来ることと言えば簡単な事ですがSNSで毎日・毎朝発信をし続け、例えば、来店されたお客様が撮影しアップされている画像を、お借りし使用するために、コメントしコンタクトを取ことでつながりを持つことが出来ました。また、感謝の気持ちを込めてDM(ダイレクトメッセージ)を送ることは毎日サーチをして対応し、コメントも必ず返させてもらっています。

こういったこともあってかは分かりませんが、少しずつ来店される方の数・頻度が増え始め、良い方向に進んでいるかなと思います。

今は、2号店として、西武新宿駅上井草駅からすぐの場所に2022年6月23日「麺や 麟子鳳雛」を開店させましたが、これまでの取組みは継続し、良い意見も悪い意見も全てチェックしています。悪い意見は一見見ないようにしたくなりますが、そこに改善のヒントが隠されていると良い方にとらえています。ですので、スタッフたちにも悪い意見はすぐに改善につなげるよう共有しています。

良い意見は「すぐに取り込め」、悪い意見は「即改善」と口うるさく、店長会議やスタッフミーティングで言っていますよ。

「ブランド鶏と野菜」「数種類の節とアゴ煮干し」それぞれの素材から長時間かけて抽出した2種類のスープを合わせたWスープ。

東京・新宿にある「はやし田」で5年、その他店舗も含め9年の修行を積んだ後、2020年に「中華そば 麺壁九年」を開業。店名の「麺壁九年」は「面壁九年」のアレンジ四字熟語からで、意味は『一つのことに忍耐強く専念して、やり遂げることのたとえ』だそうです。

テンポスとのかかわり

初めてテンポスさんを知ったのは、株式会社INGSが展開するラーメンブランド「煮干中華そば 鈴蘭」に社員として入社し、新ブランド「らぁ麺はやし田」を立ち上げる際でした。

店舗の中心が新宿エリアだったので、休み時間に歩いて行ける距離に新宿店があって、良く買い出しに行っていました。

今となっては、それがきっかけで必要なものが出てきた際には新宿店に行って購入しています。「中華そば 麺壁九年」開業時は「居抜き」だったので、厨房機器は間に合っていましたが、調理機器は全てテンポスさんで揃えましたよ。

ここで購入する決め手は、店舗からのアクセスの良さ(新宿店)と品揃え・広さもプラスの要素ですね。特に「中華そば 麺壁九年」開業時は初期費用を抑えたかったので、新品より割安な中古を探していたので、中古の品数が多かったのには助かりました。もし、厨房機器が故障した際には、新宿店に相談をする予定ですよ!

今後の展望・開業する方へのメッセージ

今は、「中華そば 麺壁九年」「麺や 麟子鳳雛」に続き3店舗目の開業を目指していますが、それはスタッフがいてくれるから考えられるし出来ること。「人」という部分を大事に考えてもらいたいですね。

多店舗展開していなくても、優秀なスタッフが独立したり、辞めたりして店主一人で切り盛りしている店舗の話もよく聞きますので、多店舗展開が良いのか良くないのかは一概には言えないですね。

ただ、自分が一人になっても働いてくれるスタッフがいないと成り立たないと思いますので、やっぱり「人」は大事です。

最後、開業する方へのメッセージとしては、「運転資金は予定より多めに準備をしておいた方が良い」ということ。開業するには「絶対に成功してやる。」という野望が強くないと成功しない。「なんとなく自分のラーメンはこれくらいだったら出来るだろう。」といった安易な考えでは絶対に失敗すると思います。

また、「学ぶ力」も大切。常にいろいろ調べたり探求心を持って取り組んだりしていかないと成長しません。「開業=スタート」なのでそこからどう成功していくかは、自分の考えと行動次第です。

「失敗を経験しないと成功はない」ので色々なチャレンジをしてほしいです。実際にやってみないと分からないことだらけなので。やってみたらいい方向に繋がることもあれば、逆にやってみて違う成功パターンが見つかることもあります。何事もチャレンジ!怖がらずにやっていきましょう!!

とめ

「中華そば 麺壁九年」「麺や 麟子鳳雛」に続き3店舗目の開業を目指しているとのことでしたが、それはスタッフがいてくれるから考えられるし出来ること。「人」という部分を大事に考えてもらいたいという言葉が印象的でした。

「コロナ禍のなかでもスタッフが辞めずに残ってくれたことで、本当にありがたかったですね。」とのことですが、人件費を削る飲食店が大半のなか、人件費を削らず、うまくシフトを組んで営業を続けるには相当の覚悟がないと出来ないことです。これによって、コロナ禍が過ぎ通常営業を開始する際に、人手不足で体制が整わないこともなかったそうで、一貫して「人」という部分を大事にされている姿に頭が下がりました。

『開業するには「絶対に成功してやる。」という野望が強くないと成功しない。「なんとなく自分のラーメンはこれくらいだったら出来るだろう。」といった安易な考えでは絶対に失敗すると思います。』という石岡さんの信念は、今後開業される方の心には大きく刺さるお言葉ではないでしょうか?

テンポスドットコムでは、様々な視点からラーメン店の開業成功を全力で応援します。
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#取材協力
店名:中華そば 麺壁九年
店主:石岡文仁氏
住所:東京都杉並区上井草1-24-22 小山ビル 1F
TEL:なし

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