地域によってこんなに違った!地域色豊かな日本のお正月料理 おせち編

外食トレンド

冷凍技術の発達により、様々な地域の特産物をお取り寄せで食べることができるようになりました。最近では、洋食や中華料理がメインとなったおせち料理や、スイーツおせちなども販売され、おせちも多様化が進んでいます。

おせちをご自身でお作りになる方もいらっしゃいますが、最近では近所の飲食店やスーパーからデパート、ネットショップなど様々なところで購入される方も増えています。一見同じように見えるおせちですが、地域によって定番の具材や食べ方など様々な違いがあるのです。

日本各地で食べられているおせちには、どのような違いがあるのでしょう。東西のおせち料理の違いから、その地域ならではの習わしまで、知っておもしろい情報をご紹介いたします。

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おせちとは

もともとは、季節の変わり目である節目の日「節句」に、神様に供える食べ物「節供」のことでした。そのうち、節句の中でも最も重要な正月の料理を指して「御節(おせち)料理」と呼ぶようになりました。おせち料理は、保存のきく料理を中心に作られます。

その理由は、「年神様をお迎えした新年に忙しくするのはよくない」「お正月の三が日は家事を休めるように」ことが由来していると言われています。1年間の五穀豊穣、子孫繁栄、家族の安全と健康などへの祈りや願いを込め、縁起を担いだ料理がお重に詰められています。

おせちの豆知識、詰め方、
重箱の選び方についてはこちら

関東と関西で異なる『祝い肴三種』

祝い肴三種とは、おせちには欠かせない3種類の口取り肴のことです。口取り肴とは、前菜にあたります。関東と関西では、3種類の内容が少し異なります。
【関東の祝い肴三種】  黒豆 / 数の子 / ごまめ(田作り)
【関西の祝い肴三種】  黒豆 / 数の子 / たたきごぼう
ご覧の通り、関東と関西では「ごまめ」と「たたきごぼう」が違うのです。祝い肴三種の内容と、込められた意味をご紹介します。

黒豆(関東・関西両方の祝い肴三種):厄除け・健康

黒は魔除けの色とされており「厄除け」の意味があります。また、「まめ」には「元気、丈夫」の意味があり、「まめに働けますように」「まめに心を配って暮らせますように」という健康への願いが込められています。

現在の主流は、関西で多いシワが入らないように柔らかく艶やかに作り上げる煮込み方です。シワが寄らず長生きできる「不老長寿」の意味が込められています。

関東では、「シワが入るまで(年をとるまで)丈夫に働けるように」という願いを込めて、敢えてシワが付くように煮る地域もあります。

数の子(関東・関西両方の祝い肴三種) : 子孫繁栄

鰊(にしん)の卵のことで、子孫繁栄を願う縁起物です。

田作り・ごまめ(関東の祝い肴三種) : 五穀豊穣

関西の祝い肴三種には入っていませんが、全国的に定番のおせち料理でしょう。原料であるカタクチイワシの稚魚は、かつて田んぼの肥料として使われていたことから「五穀豊穣」の願いが込められています。

「田作り」と呼ぶ地域が多いですが、関西では「ごまめ」とも呼ばれています。

たたきごぼう(関西の祝い肴三種) : 無病息災・一家安泰・開運

ごぼうは、古くから薬としても使われてきました。そのため、「無病息災」を祈願した縁起物です。また、地中深くに根を張るごぼうの特徴から「一家安泰」の願いや、たたき開いて作ることから「開運」の願いが込められています。

代表的な3種類だけをとっても、選出された料理や、料理の呼び名、作り方に地域のよる違いがあることがわかります。

使われる食材の違い

地域によって収穫できる食材も違いますから、食材の違いはおせちの内容にも大きく影響しています。地域によって使われる食材の違い、各地の特徴的なおせち料理の一部をご紹介します。

魚料理

魚料理には大きく違いが現れます。

東日本では鮭が、西日本では鰤がよく使われます。
北海道や東北では鮭を使った「氷頭なます」や、岩手県では鮭とイクラを使った「紅葉漬け」があります。新巻鮭も欠かせません。

関西では「にらみ鯛」と呼ばれる鯛の姿焼を飾りますし、広島県では牡蠣、山口県ではフグがよく使われます。九州では、鰤をおせち料理の材料にするだけでなく、お正月に食べる刺身や雑煮の具としても使われます。

他にも、秋田県の「ハタハタ寿司」、宮城県の「カレイの煮つけ」、山形県の「鯉の甘煮」や「カラカイ(エイ)の煮物」、福島県の「いかにんじん」、茨城県の「鮒の甘露煮」、栃木県の「モロサメの煮物」、静岡県の「ブダイの煮つけ」、京都府の「棒ダラの煮物」、大阪府の「にらみ鯛(鯛の塩焼き)」、島根県の「ワニのお刺身」、岡山県の「ママカリ」、佐賀県の「アラ(クエ)料理」、長崎県の「クジラ」などの魚を使った地域特有のおせち料理があります。

野菜料理

野菜の特産物を使ったおせち料理では、栃木県の「いも串」、埼玉県の「くわい」、千葉県の「かいそう」、神奈川県の「きんぴらごぼう」、富山県の「五箇山豆腐(ごかやまとうふ)」、長野県の「長芋ようかん」、三重県の「煮なます」、滋賀県の「赤こんにゃく」、奈良県の「柿なます」、和歌山県の「ぼうり」、熊本県の「からし蓮根」、宮崎県の「キンカンの甘露煮」などがあります。

玉子料理

卵料理で有名なのは、伊達巻でしょう。その他にも、東京都の「錦玉子」、石川県の「べろべろ」、鹿児島県の「こが焼き」などがあります。

各地の気になるおせち料理

各地のおせち料理の中には、「氷頭なます」、「べろべろ」、「ワニのお刺身」、「ぼうり」、「ママカリ」、「大丸」など変わった名前のおせち料理があります。どんなものなのでしょうか。

氷頭なます:北海道・東北

氷頭なますは、北海道や東北などの郷土料理です。
鮭の鼻先の軟骨を薄切りにし、大根や人参と一緒になますにしたものです。

べろべろ:石川県

べろべろは石川県の郷土料理で、溶き卵を寒天で固めたものです。
砂糖、だし、しょうゆなどで味付けされており、甘じょっぱい味です。

ぼうり:和歌山県

ぼうりは、和歌山県の郷土料理です。里芋の親芋を皮をむかずに数日間煮込んだもので、お餅の代わりとされています。

ワニのお刺身:広島県・島根県

ワニのお刺身の「ワニ」とは、実は「サメ」のことです。広島県や島根県など中部地方の山間部では、「サメ」のことを「ワニ」と呼びます。

サメはアンモニアを多く含み日持ちするため、山間地域でも刺身で食べることができ重宝されました。
そのまま郷土料理となり、広島県や島根県の一部ではワニの刺身がおせち料理の定番となっています。

ママカリ:岡山県

ママカリとはニシン科の魚で、一般的には「サッパ」と呼ばれています。
『”まま(まんま=飯)”を隣りから”借り”てくるほど食が進む=おいしい』という意味で、西日本では「ママカリ」と呼ばれることが多い魚です。

岡山県では定番の魚で、ママカリを使用した酢漬けやバラ寿司がおせち料理に入ります。

大丸:高知県

大丸は高知県の練り製品で、ゆで卵を丸々紅白かまぼこで包んだものです。
切った断面が初日の出のように見えておめでたいので、おせちによく入れられます。

皿鉢料理(さわちりょうり):高知県

皿鉢料理は、高知県のお正月には定番の郷土料理です。
お祝いの席に用意するもので、大皿に刺身・寿司・煮物など様々な料理を盛り付けたものです。

こが焼き:鹿児島県

こが焼きは、鹿児島県のおせちに欠かせない料理です。魚のすり身・卵・豆腐・砂糖などを混ぜて蒸し焼きにしたものです。四角いケーキのような見た目をしていて、甘味もあり、伊達巻のような料理です。

味付けの違い

もともと、関東では「濃い口しょうゆ」、関西では「薄口しょうゆ」が日常的に使われています。そのため、味と見た目にしょうゆの違いが反映されます。

さらに、関東では甘い味付けがこのまれるため、「栗きんとん」「伊達巻」など砂糖を使う料理は、関東の方が関西よりも甘く作られるようです。

お重への詰め方の違い

関東は『重詰』、関西は『重盛』
関東では、持ち運ぶ際に揺れても崩れないよう、ぎっしりと詰める「重詰」で盛り付けられることが多いです。
一方関西では、詰め込み過ぎず、美しく盛るように詰める「重盛」で盛り付けられます。

おせち料理を食べる日が違う?

全国的には、元旦におせち料理を食べる地域が多いでしょう。他方で、北海道や東北地方の一部では、大晦日におせち料理を食べる風習があります。

この違いは、「新年を迎えること」をお祝いするのか、「新年を迎えたこと」をお祝いするかの違いです。大晦日に食べるのも、元旦に食べるのも、「新年を祝う」意味では同じです。

北海道や東北地方では年越しそばはいつ食べる?
北海道や東北地方では夕方におせちを食べ、その後年越しそばを食べる家庭が多いようです。
お雑煮はいつ食べる?
お雑煮は、全国共通で元旦に食べるのが一般的のようです。

おせち料理を食べない地域もある?

琉球王国として独自の文化を築いてきた沖縄県では、”おせち”という文化がありません。お正月には、「御三味(うさんみ)」と呼ばれる重箱に詰まったお祝いの料理を食べます。

この「御三味(うさんみ)」は、田芋、結び昆布、揚げ豆腐、こんにゃく、紅白かまぼこ、ごぼう、カステラかまぼこ、皮付きの豚の三枚肉、魚の天ぷらなど9品の料理が詰められたお重と、9個か15個のお餅を詰めたお重とで構成されています。

その他にも、ラフテー(泡盛で煮込んだ豚の角煮)、ジューシー(沖縄の豚肉の炊き込み御飯)、クーブイリチー(昆布の炒め煮)、田芋田楽、花いか、ミミガー刺身などが正月料理としてよく食べられています。

【番外編】世界のお正月料理

中国

中国では、春節である1月下旬から2月中旬の旧正月を大々的に祝います。大晦日には、家族で餃子を食べるのだそうです。中国で食べる餃子は、水餃子が一般的です。

韓国

韓国では、「トックク」と呼ばれる、牛肉や鶏肉などでだしをとったスープにトック(スライスした餅)を入れたものを食べるそうです。日本での雑煮のようなものですね。

台湾

台湾では、正月よりも大晦日が大切にされています。紅白の白玉の入った甘いスープ「紅白湯圓(ホンパイタンユェン)」が食べられます。

他にも、切らずに茹でたほうれん草をそのまま食す「長年菜(ツァンニェンツァイ)」や、もち米のお粥の「糯米甜粥(ヌォミィーティェンツォ)」もよく食べられているそうです。

イタリア

イタリアでは、豚足に豚肉のミンチを詰めた「ザンポーネ」や、腸にミンチを詰めた「コテキーノ」という肉料理が食べられます。ザンポーネやコテキーノには、ゲン担ぎのレンズ豆を添えるのがお決まりです。

フランス

フランスでは、「ガレット・デ・ロワ」というお菓子(ケーキやパイ)を食べます。このお菓子には、フェーヴというプラスチック製や陶製の人形が入っており、フェーヴを引き当てた人が一日だけ王冠をかぶり王様・王女様になれるという風習があります。

まとめ

同じ日本のおせち料理でも、各々の地域で育まれた文化の中で、料理内容から食べるタイミングまで様々な違いができたことがわかります。冷凍技術と流通の発達により、遠方の料理が気軽に食べられるようになった現代では、おせち料理の地域性は薄くなりつつあるかもしれません。

しかし、さまざまな地域のおせちを食べることができる良い機会でもあります。今年は、古来よりおせちに込められた祈りや願いに思いをはせながら、おせちを作り、選び、食してみてはいかがでしょうか。
皆様の1年が良い1年となりますよう。

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