東京都水道橋にレンタルキッチンがオープン

外食トレンド

客席が無く宅配で料理を提供する飲食店「ゴーストレストラン」を対象にした、レンタルキッチンが東京都、水道橋で3月26日にオープンした。キッチン名は「THE GHOST RESTAURANT(ザ・ゴーストレストラン)」だ。運営は株式会社ランデスホールディングスの代表取締役、下村英司氏。自身でゴーストレストランを運営後、次は場所を貸す側としてレンタルキッチン業を開始した。特徴は何といっても中小飲食店の使い勝手を追求した点にある。 “下村英司氏”という人物にスポットを当てながら、立ち上げの経緯を紹介したい。

下村英司とはどんな人物か?

大学卒業後はホテルのレストランに就職。先輩たちは5、6歳年下の荒れくれ者ばかりで、厳しい環境だったが必死に働いた。その後、上層部から推薦され割烹旅館へ移籍。夢中で働くも調理場の冷えから腰のヘルニアを発症。安静のために1週間ほど入院してから出勤すると、経営者からクビを宣告された。なんてこった。
 ヘルニアも完治していなかったことから、次は経営を勉強するために営業職に就職。抜群の成績を上げ、管理職に昇進、新規事業の立ち上げにも携わった。その後2007年にSEOとインターネット広告を主軸としたIT会社を設立する。そして2022年、レンタルキッチン事業を開始した。

なぜ、レンタルキッチンをやるのか?

実は過去にシェアキッチンを借りて、デリバリー専門のジビエ料理店を運営した経験がある。そのキッチンは月額26,000円、既定の時間を超えても1時間当たり1,000円と格安で利用できた。しかし仕入れた食材や仕込んだ料理を在庫することができない。朝、食材を持っていき終わったら全部持ち帰る日々。シェアキッチンは駅から徒歩1分と便利な場所にあったが、結局は車で食材を運ぶため駐車代もばかにならなかった。

そこで効率を上げるために時間貸しではなく、デリバリー専用の占有できるキッチンを探し始めた。資料請求してみると月額料金や初期費用が想像以上に高額なことに驚く。高額にも関わらず、ほぼ空室が無い状態にはもっと驚いた。しかしこの価格では契約できない。もっと小規模で、もっと安価に開業できるレンタルキッチンがあれば喜ぶ人がいるのではないかと考えた。これがレンタルキッチン事業を立ち上げるきっかけとなる。

あの日の妻との晩酌は、最高だった

レンタルキッチンを始めるにあたり、試算すると自己資金では到底実現できないことが分かり、かなり落ち込んだ。しかし情報を集めているうちに「事業再構築補助金」を知る。この補助金の申請は、素人では採択されるなんて無理だと言われたが、中小企業支援財団の無料相談に通いつめ、中小企業診断士の先生に何度も添削してもらいながら申請書を書きあげた。そして2回目の申請で採択を掴んだ。
その日は、支えてくれた妻と喜びを分かち合い、当初から相談に乗ってくれていたテンポスの担当者に電話で報告。いよいよ走り出す。

現場監督、やるしかない

 内装工事は、下村さんが現場を指揮している。店舗工事の経験はないが、諸事情により自分ですることになった。現場に行くと、1階から2階までの搬入経路には厚手のブルーシートがピッチリと隙間なくテープで固定されていた。下村さんが夜な夜な貼ったのだ。こういうところを、きっちりとやることが大事なのだと話す。

 排煙ダクトを2階から5階の屋上まで設置する時は、外壁に足場を組む必要があった。そのため道路使用許可証の申請代行をお願いしようと考えた。しかし、いざ見積をとると、10万円の見積書が返ってきた。理由を聞くと交通費も含めてそれくらいかかるのだとか。そんなアホな話あるかということで、自分で申請することに。警察署に行き教えてもらい、手数料2,700円で申請の手続きを終えた。全く難しいことはなかった。他にも、道路の交通誘導員も自分ですることで費用を節約し、また現場管理もスムーズに進めることができた。

 現場では業者がちょっと驚くことがある。それは冷蔵ショーケースがあり、缶コーヒーやお茶、さらに缶ビールやサワーまで置いてあるのだ。その日の労いの気持ちを込めて、下村さんが業者さんに渡している。お昼は毎日、近隣をまわり美味しい弁当を買って職人さんに振る舞っている。最近では、いつも来てくれる職人さんが頑張ってくれているからと、休憩用にコーヒーゼリーも買っているのだとか。神か!

 他にも、工事の様子はタイムプラスで撮影しほぼ毎日SNSで配信している。現場監督をしながら、開業に関わる準備もして、SNSでの情報発信も欠かさない。そのバイタリティーには誰もが驚くことだろう。

内装工事初期の写真。現場監督は下村さんが務めた。

中小飲食店の使い勝手を追求したレンタルキッチン

 最後に、「THE GHOST RESTAURANT」の特徴について紹介したい。室内には8つの厨房区画があり、1区画の広さは1.5坪~1.8坪だ。各区画に冷蔵庫や3口のガスレンジ等が設置されている。また、給湯器や電気の子メーターも区画ごとに付いているため設備面も充実している。JR「水道橋駅」から徒歩2分とアクセスが良いのも借り主にとってメリットだろう。各デリバリーサイトの注文は1つの端末で管理できる。また、防犯カメラを4台設置した上で、昼は建物に入る自動ドアは開けておき、デリバリーの配達員がスムーズに出入りできるスタイルにする。その他にも、デリバリーサイトのSEO対策や、各種デザイン等の要望にも有料でこたえていく。「面倒なことは、全部うちに言ってください。皆さんは本業にぜひ専念して欲しい」と話す。契約期間は最短6カ月間から、賃料は10万円台となる。詳しく知りたい方は、ぜひ問い合わせてして欲しい。

内装工事中に置かれてたドリンク類。職人さんや業者さんに感謝の気持ちを込めて缶ビールなどを配っていた。

企業情報
レンタルキッチン「THE GHOST RESTAURANT(ザ・ゴーストレストラン)
東京都千代田区神田三崎町3-6-17 BACHビル2階
株式会社ランデスホールディングス
代表取締役 下村英司氏
TEL:050-5583-8821

飲食業界誌「スマイラー」

毎月15,000部を発行する飲食業界誌です。飲食業界で働く人の笑顔を全国に届けたいという想いから、2009年に創刊しました。飲食店経営の楽しさ、厳しさなど、飲食への想いを丁寧に取材しています。
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