【ラーメン店・麺やでこ】10年かけてたどり着いた「自分が食べたい味」を追及する「ブレない姿勢」でつかんだ成功秘話とは

出店・開業

2014年5月に開店し、東急東横線「新丸子駅」から徒歩3分、自慢の煮干しと動物系出汁のWスープのラーメンが看板メニューで、食べログでは★3.70、ラーメンデータベース91.429(2023年10月24日現在)に輝くラーメン店『麺やでこ』。

「自分の食べたい味」を追及する『麺やでこ』の開業から現在の人気店に至るまでの苦労や失敗談、今後の展望をお聞きしました。

開業までの経緯

22歳で入社・25歳で独立開業

学生時代に原宿で居酒屋のバイトをしていた中島さん。そのころから「いつかは自分で飲食店をしたいな。」という夢を持っていました。しかし、その後サラリーマンとして働き、原宿の居酒屋で働き始めた時の常連さんが、「人手が足りないのでうちへ来ないか。」と誘ってくれて、22歳で入社。その後25歳で独立開業をしました。

サラリーマンとして、それなりにやっていましたが、やはり「飲食店をやりたい」という思いから、縁もゆかりもない鹿児島へ修業に行くことにしました。

無給での修業

結婚した時の仲人さんが鹿児島出身の方で顔が広く、そのお姉さんも顔が広かったため「ラーメンの修業をしたい」と相談したところ「人生一度なんだから自分のやりたいことやったほうがいいんだよ。」と背中を押されたそう。

当時、恵比寿で仕事をしていて、ラーメン屋さんの大行列を目の当たりにしたり、テレビでもラーメンの特集を数多くしていたりしたことから、「開業するなら元々おばあちゃんとの思い出の味でもあったラーメンにしたい。」という想いがあったそうです。

しかし、「子供もいるので3~5年も修業するのは厳しいんですよね。」と相談したところ、鹿児島でだったら「薩州麺屋連合会」というラーメン屋さんの集まりのようなものがあり、それを束ねている方がいて、今度池袋に来るから会ってみるといいと教えていただきました。

そこで「短い時間で教えてほしい」という願いを聞き入れてもらい、無給で修行をすることを決意し鹿児島へと渡りました。

鹿児島での修行を経て東京での開店

鹿児島では、『みそや』で1年弱くらい勉強させてもらい、その後にグループ内のお店で、魚介と動物系とのWスープを唯一扱っている『一件目』でも勉強をさせてもらえることになり、修行を終えて東京へと帰ってきました。

そして『麺やでこ』をやる3,4年前くらいに目黒線の西小山で『麺喰酒場月音』という店を開業しました。

「呑んで食べてラーメンで〆るみたいなお店」で、そういったお店も少なかったので、それなりに繁盛はしていましたが、リーマンショックなんかもあって4年もしないで閉店してしまったといいます。

修行してきた味で、自分なりに頑張って勝負したつもりではあるんですが、なかなか上手くはいかなかった、と中島さんは語ります。

また、「出店したことでできた横のつながり」などをつてに色々なところで勉強させてもらったり、香川の大和製作所のラーメン学校で勉強したりして、再び開業にこぎつけたのが『麺やでこ』でした。しかし腕を悪くして2ヶ月で休業することに。

行きついたのは「自分の好きな味」

最初は鳥白湯のスープで挑戦したのですが上手くいかず、貝出汁の塩ラーメンで勝負して、軌道に乗せることができました。そんな紆余曲折(うよきょくせつ)を経て最終的に行きついたのが

「自分が食べたいものを作るのが正解なのかな。」

という思いでした。

ちょうど10年前くらいから、SNSなんかで叩かれたり、そういうのを目の当たりにしたりして、自分の足元がぐらつき、心が揺らいで「なんで店をやっているのか」さえ分かからなくなってしまいそうだったそうです。

そんな時気が付いたのが「自分が食べたいものを作る」ということ。

誰に何を言われようと、「自分が好きだからこの味で作っている。」という思いがあれば、気持ちもぐらつかないでいられる。そんな思いで生まれたのが今の煮干し系スープなのだそう。

特製追い煮干しそば 1,300円(税込)

ベースのスープは「羅臼昆布」と「干し椎茸」を水出しした出汁に、「伊吹いりこ」「九十九里の背黒」「境港産煮干し」「平子」を加え、仕上げに「鶏挽肉」を入れて動物系の旨味を足し、エグミや苦みの少ない、煮干しの良い部分だけを抽出したバランスの良いスープに、麺は北海道産国産小麦100%しなやかな細麺を使用しています。

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苦労したこと、失敗したこと、それらを乗り越えたエピソード

やはり、開業後、その時の味に関して「自分が思ったよりも受け入れられなかった。」というのが一番の失敗。

独自のものを出さないと、やはり上手くはいかない。他の人に合わせようとせず、「オンリーワン」を目指すというところに行きつくまでが苦労だった。

「ぶれない心」を持てるようになるまでがとても大変でした。お客さん100人に合わせた味は作ることはできないので、10年やってやっと毎日毎日やりながら自分の好きな、「自分が作りたい味を作る」ということに行きつきました。

そもそも「なぜラーメンなのか?」というのは、僕が母子家庭でおばあちゃんに育ててもらったところから始まったんです。僕がひどい泣き虫で、保育園の帰りに泣きじゃくっていると、帰りの長い坂道の下にあったラーメンと焼きそばと大判焼きを出す店に連れて行ってくれました。

そこで「一杯のラーメンをおばあちゃんと2人ですする」っていうのが僕の心の中にずっとある。そこからラーメン好きになり、「好きこそものの上手なれ」でやってこられているのだと思います。

信念を曲げない、食っておなかを満たすだけじゃなく、心も満たすものだと思うので、そういう信念でいつか広まっていけばいいなって。

「ひとつの信念を持ってやるということが大事、楽な仕事ではないので自分のポリシーを大事にしたい。」と中島さんは誇らしげに語ってくださいました。

麺は、特注麺の平打ち麺にする事により、スープとマッチし、タレも、何種類かの醤油をブレンドする事により、酸味と甘みが感じられます。器の3分の2くらいを占めるのが2種類のチャーシュー。豚はしっとりかつあっさり、鶏は厚みがあって柔らかく、ボリュームも味も満点です。

開業してみてはじめてわかったこと

人材不足

やはり、人手不足ですね。コロナ前からそうでしたけど、志が高いスタッフが来てくれるっていうのが一番の理想ですが、なかなかそうはうまくいきません。働きやすい環境づくりが大事になってきますよね。でもそこがすごく大変で。

お客さんを満足させるということは、スタッフを満足させること」だと思うんですよね。スタッフが満足していなければ、お客さんを満足させることはできないと思うし、スタッフが満足していれば、チームワークとかそういったところでお客さんに気持ちよく食事してもらえる。

結局、「働きやすい環境を作る」っていうのが大事になってくると思います。人に来てもらう、長くいてもらう、コミュニケーションをしっかり取る、フォローアップする「旨い麵だけつくってりゃいい」っていう時代ではないと思うんです。

相手を尊重して人間関係を保つ。気をつかう。昔のスタイルは通用しないのでみんな物事を客観的に見ているような気がします。想いだけでどうなるものでもない。

志が高い子もいればそうでない子もいる、そこを「どっちがいいとかいうことではなく、どちらも尊重してきちんとみんなを評価してあげないといけないかな。」と思っています。

カウンター8席、テーブル4席とこじんまりとした店内。

原材料費や光熱費の高騰と提供価格

あとは、食材や光熱費の値上がりにとても困っています。価格に転嫁できないので、こればっかりは、どうしていいのかがわからない。価格として1,000円を越えるのはなかなか難しい。
消費者側で言えば、やっぱり1,000円で納めたいっていう気持ちも分かりますし。

「価格って原価だけでない。」そういうのをお客さんに発信していけないのが難しいですね。
以前に比べ煮干しの価格は上がりましたし、それをどうお客さんに発信していくかに頭を悩ませています。
他の飲食店と違って、やっぱり価格に乗せていくのが難しいって側面もありますし、そういうところが悩みの種ですね。

テンポスとのかかわり

今の店以外にも2店舗のお店がありますが、大森と九段下の店は、横浜店の長嶋さんに店舗の全てをやってもらっていました。今も直接行くというよりは、欲しいものを横浜店に相談して全部揃えてもらい、メンテナンスから何から全てやってもらっています。

テンポスさんのいいところは、メンテナンスなどのアフターフォローをしっかりやってくれるところですね。機械とかだって買った後が大事だと思うんです。壊れたり買い替えたりなんかがあるから、アフターフォローって大事だと思うんですが、そこをしっかりやってくれるところが少なくて。

テンポスさんは、そういうのをしっかりやってくれるのでとてもありがたい。
この間なんかは、機械が壊れた時に応急処置を教えてくれて。そういう、アフターフォローがありがたいですよね。

今後の展望・開業する方へのメッセージ

今後の展望

展望は、「飲んでつまんで食べる」という店を都心部に、餃子を数種類置いて、ビールと餃子とラーメンが食べられるような、「飲んでゆっくりラーメンを食べてもらえるお店を来年以降に開店する。」ということを考えております。

「軽く飲んでラーメン食べようぜ。」って寄っていくっていう店、そういう店があったら行きたいなっていう店を作りたいです。

開業する方へのメッセージ

「初心貫徹」ですかね。

今は、時代の先読みをどうしていくかということが問われている。「自分が何をしたいか」というよりは「どうありたいか」が大事。「右に習え」ではなく、「自分がどうありたいか」という気持ちをしっかり持つことが大事だと思っています。「なぜ開業したいのか、独立したいのか」という心の炎をともすことが大事だと思います。

「修業して開業するときに灯した自分の心の炎に、薪をくべてずっとメラメラ燃やし続けられる心の強さが大事。」だと思います。

まとめ

「おばあちゃんとともに食べた一杯のラーメンが心に残り続けている。」という中島さん。

「食」というのはおなかを満たすだけでなく、食べた時の思い出や一緒に食べた人の笑顔や、「美味しいね」と言い合ったそんな記憶とともに心に残り続けるものだとお話を聞いていて感じました。

流行りに乗って味を追いかけるのも間違いではないかもしれません。それでも、「自分らしさや自分の作りたいもの、自分の好きな味、自分の想い出の味など、確固たる信念をもって作り続けられる味がある」ということは開業し、長く続けていくためには大事な要素なのかもしれません。

情報の波にさらわれがちな現代だからこそ、中島さんのように「自分の好きな味を守り続ける姿勢が、成功への秘訣なのかもしれない。」と考えさせられました。

テンポスドットコムでは、様々な視点からラーメン店の開業成功を全力で応援します。
自分のお店の業態に合わせて必要なものは何があるのか、詳細を確認することができますので是非ご覧ください!

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#取材協力
店名:麺やでこ
オーナー:中島 幹尚氏
店主:祖父江 晶夫氏
住所:神奈川県川崎市中原区小杉町1-520-6
TEL:044-819-8767

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